ベンチャー企業を取り巻く環境の変化が急速なことから、長期にわたるビジネスプランの作成は一般的に困難であり、店頭上場審査においても3年程度の中期経営計画と長期ビジョンとの併用が通常となっている。本書でも同程度の期間を想定した中長期の経営計画の策定プロセスを一体化させている。その前提となる企業分析および環境分析の内容と手順、ドメインの決定、企業ビジョンの設定を経て、経営戦略の策定―実行計画―数値計画という流れに沿って解説されている。年度予算編成手順などの短期経営計画の実務は本書の対象外である。
多くのベンチャー企業では、会社の急成長によってトップマネジメントが日々の業務執行に忙殺されていることもあり、ビジネスプランを策定する余裕がないか、あってもその重要性を軽視する傾向が強いために、経営が場当たり的になり、挫折してしまうケースが少なからず見られる。この本を読めば、経営活動の目標を設定し、目標実現のための方策と行動予定を決めるビジネスプランが、合理的な経営活動の推進に寄与するものだということが理解できるだろう。ベンチャー企業幹部にぜひ読んでいただきたい1冊である。(徳崎 進)