相場を楽しむ人。
★★★★★
最後の相場師と呼ばれた、是川銀蔵氏をモデルにした伝記小説です。舞台の殆どは、80歳を過ぎて行った株式市場における3回の大相場です。3度目で、是川氏は長者番付1位となりました。私はこの長者番付で氏のお名前を知り、相場師という人たちのことを知ったことを憶えています。日本では、相場師という言い方は、まだ如何わしさが付随した響きを感じますが、是川氏の場合は、アメリカで言えば、ウォーレン・バフェットやジョージ・ソロスといった人たちのような存在であったのだと感じました。その是川氏は佐久間平蔵という名で登場しています。著者は、株式市場というものを平蔵を通して描きたかったのであろうと推測しました。平蔵は、大相場を仕掛けますが、2度目、3度目共に窮地に達します。2度目は破れ、3度目で勝利します。最後の相場師と呼ばれた人であっても、株の取引で勝利するのは容易なことでないことを示しています。素人が同じようなことをするのは危険であることも教えています。また、平蔵は、株取引それ自体を目的に行っています。設けたお金は、慈善事業に寄付します。実は、こういった姿勢がとても大切なのであろうということは想像が付きます。野球選手がグラウンドで動き回るように、相場師は市場での売買を楽しんでいるかのようです。主人公がとても魅力的な作品です。
臨場感たっぷりの激動の相場
★★★★☆
歴史小説に多くの優れた作品を残している津本陽がこのようなダイナミックな展開の経済小説を残していたとは知りませんでした。
1976年10月から1982年頃までの6年間が描かれており、主人公の佐久間平蔵は伝説の相場師・是川銀蔵氏をモデルにしています。是銀さんは、1982年当時の長者番付の1位になるなど大変有名になった人で、当時はマスコミに騒がれたものでした。
本書の佐久間平蔵は日本の基幹産業の資源株に目をつけ、一点に絞って安値を丹念に拾いながら買い進みます。一定のチョーチンがついてからは、信用取引でもって遮二無二買い進み、一か八かの瀬戸際に追い込まれながらも駆け引きを駆使しながら見えぬ売り方に対峙していく様は、株式投資の醍醐味を見事に表していました。
実際、是銀さんがどのような相場を張ったのか、氏の自伝を読んでいないので分かりませんが、津本陽はそれを踏まえながらもまさしく見てきたかのような描写力でこの老相場師の生き様を浮き彫りにしていました。大株主となって会社との関係を持つところも実際のところは分かりませんが、生き生きとその事情を描いていますので、株式投資に関心の薄い人も十分楽しめる経済エンターテイメント小説として成り立っていると思いました。
なお、本書の新装版の文庫は2007年5月25日の発行ですが、その前の角川文庫は1988年1月に発行され、単行本『裏に道あり 「相場師」平蔵が行く』は1983年12月に日本経済新聞社から発行されています。
激動の時代を生き抜いた男
★★★★☆
壮絶な相場の戦いをたった一人で戦い抜いた男の一代記である。
実在の人物をモデルとしており、老境に入ってからの株の世界を一人で
戦い抜く姿はまさしく相場師と呼ぶにふさわしい。
株の仕組みを知りたいのなら・・・
★★☆☆☆
これから株をやってみたいという方には良いかもしれませんね
小説としてはイマイチですね
読み進めるうちに自慢話と苦労話をを延々聞かされてる気がしてゲンナリしてきます
特に若い人にはお勧めしません
是銀さんも・・・
★★★★☆
「最後の相場師」是川銀蔵氏がモデル。文体が生き生きしていて、相場の場面では思わず手に汗握る。相場の局面ではかなり史実に忠実に再現していると思うが、そうすると是銀さんも相場の初心者がやるようなミス-期待感に駆られて、自分のルールを破って等-結構手仕舞いに失敗しているなあと。妙な面白さがあった。