始まりは映画『白い船』のサウンドトラックだった。アメリカで現地のミュージシャンたちとのレコーディングを繰り返してきた角松敏生が、徐々に日本という「自分のルーツ」を再確認してゆく過程において、この映画音楽を担当したことが本作への大きな足掛かりになったようだ。「肉体の中にあるもの」を意味する「Incarnatio」と名付けられた本作で、彼はアイヌの弦楽器や沖縄の三線、女性コーラスなどを使用しながらも、あくまで角松流ポップスのフィルターを通して「変わらぬもの」を探し求めている今の我々の心を歌っている。(花 香)
彼は転がり続ける
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もう何年も、そう何度も何度も何度も聴いた。
しかし何度も耳から身体に入れても気持ちが良いのは何故だろう。
それが”血”と言うものなのであろうか。
解凍後、彼が変わってしまったと嘆く人がいる。
彼が変わったのだろうか、貴方が変わっていないのだろうか。
いや、確かに変わったのだ。
少しでも前へと転がる人。 転がらずその場で老化するだけの人。
どちらも変わったことには違いない。
ただ自分自身も青木氏死去により未だ転がれずにいる一人なのだが・・
人の様々な思いを具現化した癒しの玉手箱 角松最高峰のアルバム
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聴くシュチエーション・・・海の見える丘、ヘッドホンから『風車』を聴く、トンコリのやさしいイントロに始まり、和太鼓の心を揺さぶる「ドーン」という音に鳥肌が立つ、両腕を空高く突き上げると大きな大きな風車になって空高く舞い上がる、そしてあなたの心は浄化されていくことでしょう・・・。
何年経っても色あせることないアルバム『インカナティオ』の世界、人の様々な思いを具現化した曲の数々、そして癒しのアルバムだとやがて気づくでしょう。
ぬくもりを感じるアルバム
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解凍後の良作ですね。
映画「白い船」のサントラの直後くらいに発売されたものだと思うのですが、過去の楽曲とくらべると、「暖かい」です。アイヌ民族音楽、沖縄、出雲、「日本」の風景や音にインスパイアされて、吸収し、消化して角松さんのサウンドになっている感じです。
凍結前の楽曲のスピード感やシャープさはなくなっていますが、こちらはこちらで非常に良くこなれているなと思います。
どちらの角松サウンドが好き?と聞かれると、「どちらも好き」と答えてしまいますね。
イージーリスニング的な要素もあり、民族音楽風の味付けもあり。くたびれたときによく聴いています。
時間が必要です
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「トンコリ」というアイヌの楽器を使うことにより、独特のリズムをかもし出しています。アイヌ音楽と沖縄音楽をポップスに融合した角松の集大成です。ある意味、聴き慣れるまで時間が必要ですが、きっとその魅力に取り付かれるでしょう。でも、好き嫌いがハッキリ分かれるアルバムでもあります。
まだまだ新しい所がすごいっ!
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自分に素直に、角松敏生の最高傑作がコレ!と書いてしまうと、氏の他のアルバムよりこのアルバムを先に聞いて、変に納得する人が出てくるかもしれないのでちょっとフクザツ。何より音作りが超マニアックな上、独自の詩世界の怒涛の展開は角松初学者にはあまりお勧めできない。収められている楽曲達を楽しむには、残念ながら角松氏のひととなり、アルバム製作の経緯を知り、出来るならそれなりの音楽鑑賞履歴があった方がより楽しめるでしょう。角松ファン向け、というよりは、音楽愛好家向けという方がしっくりくる気がする。そして更に注目したいのはその鮮度である。発売から3年立つが、一部の打ち込み主体の曲でさえ、全くその鮮度を薄めている感覚はなく、実は今が食べ頃なのではないか、という錯覚すら覚える。こんな魔法のかかったアルバムは本当に希少だ。このHDDプレーヤー全盛時代に、初聴きの時から、未だに1曲目から最後まで聞かせてしまうんだからスゴイ。僕にとっては、70年代後期~80年代前半に出された良質のフュージョン、AOR、R&B、「ニューミュージック(古いネ)」の感覚に似ているのだ。正直、氏のバブル期にだされたアルバムに収められた楽曲も高い品質を保っているのは間違いないのだが、個人的には、完全に上をいっていると感じている。生のボーカル、生のコーラス、生の演奏が、その鮮度を真空パックにした如く語りかけてくる。こんな思いは、ちょっと出来ないヨ。