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容疑者の夜行列車

価格: ¥1,680
カテゴリ: 単行本
ブランド: 青土社
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2人称じゃないほうが完成度上と思ってしまった ★★★☆☆
 異国情緒が描かれ、文体(読点が非常に多い。だが無駄がないので読んでいてむしろ心地よい)からも独特の雰囲気が描かれて良い。
 しかしこの小説、主語を二人称にしているのが特徴だが、「あなた」を「わたし」(or人物名)に換えれば、旅日記私小説風な作品として、むしろしっくりくるんじゃないかなと思ってしまった。その二人称はもちろん効果を上げているが、デメリットもちょっとあえて二人称にするには多すぎないかと。
 一例を挙げると……
 経営管理学の歴史をちょっと学んだ側からすれば、冒頭から出てくる「ストライキなら必ず『あなた』は善だと思い、ストライキだからという理屈でフランスでの公演をフイにされそうになりながら『あなた』はそれを数行に渡ってベタ褒め、応援したがる」、という単純過ぎる価値観に(あなたがそう、と言われると)シンクロできない。
「レジスタンス軍はみんな正義」レベルの思考の持ち主呼ばわりされた気分である。そりゃ、テイラー以前の時代の価値観ならそれでいいでもしょうけど。仮にも最先進国ならば社会機能停止という準暴力的な手段で訴えるまでもなく折り合いをつけるのが国家社会として望まれる。むしろフランス人達自身が、「スト大国」を嘆いている。自分なら、それができないフランス社会の不完全さにしょうもなさを感じ、まぁ現代でも国ごとに色んな欠点を持っているもの、それが成立する日が来るようがんばってくれ、くらいに感じる。でも『あなた』は違う。そんなことがたまに見られる。
夜のお化け ★★★★☆
あまり読書家ではない。
著者を知ったのも最近だった。
鮮烈なデビューだったらしい。が、それは分からない。
小雨が降ってくるような文体だと思った。
それが好きだ。

普段は過剰な装飾でいっぱいの世界も、
夜になると闇によってすべてが裸の姿にされる。
すると、その闇の奥には、見えないが感じる、
世界を牛耳る化け物がいる。
化け物は何もしない。何もしないで夜が明けるまでいる。
夜が明けると、電車の窓から工場の煙が見える。
強烈な朝日。

小さなころ夜行電車に乗ったときの記憶がよみがえりました。
あの時、うきうきしながらも感じていた恐怖は、
夜のお化けだと、今は思っている。
著者も同じように夜行列車に乗っていてくれていたらいい。
言葉の力を感じる ★★★★★
37歳の今、このような小説を読むと、日本語が本当に新鮮に感じられます。
言葉のもつイメージ喚起力のようなものを
一つ一つ噛みしめるような感じで読み進めます。
無駄のない研ぎ澄まされた言葉の組み合わせで文章、物語が出来ているということを
初めて文章を読むような感じで読み進めます。
楽しい読書体験ができました。
ときどき読み返したくなります。


過渡期の作品 ★★★☆☆
2000年代の著者の作品が徐々に薄味になってきて、お嘆きの読者諸兄諸姉が多いのではなかろうか。

デビュー当初の90年代のめくるめく日本語の狂乱がだんだん薄れてきて残念だと思うのはわたしばかりではないだろう。

デビュー当初のあの異常な文体の功罪はともかく、あの頃の著者がエネルギッシュに文学を突き進んでいたことだけは確かで、それが最近作にはなくなってきた。良く言えば落ち着いてきたし、悪く言えば著者らしさがなくなってきた。

しかるに本書は両者の中間点として評価できる。ごく悪くないできばえである。

最低この程度の小説を松浦寿輝も堀江敏幸もめざしてほしいとは願うものの、所詮、才能の違いはいかんともしがたい。ともかく現代日本文学をひとりでリードする俊英作家である。
だいぶ落ち着いてきた ★★★☆☆
初期のころに比べると葉子の日本語もだいぶ落ち着いてきたとも言えるし、逆にだいぶ陳腐になってきたとも言える。二人称小説じたいヌーヴォー・ロマン以来、目新しくもなんともないので、「あなた」という人称は本作品ではどうでもよい水準にとどまっている。無論、昔の日本のブルートレインや今の欧州列車で夜行を経験した読者が「あなた」という人称によって過剰に本作に感情移入できる装置としては働いてはいるが。ただ全体として、いつまでたっても明けない長い夜、いつまでたっても醒めない長い悪夢を可能にする夜行列車の旅の連結という構成は秀逸だろう。