中でも「無精卵」は、日常に突如として現れる異常を鋭く描いていて、読み手をグイグイ
と引き込んでゆく。最後にはなかなかショッキングなラストが待ち受けているのだが、ス
トーリー以上に作品に漂う雰囲気が魅力的だ。
著者はドイツ語でも創作活動を行う上、世界を舞台に活躍しているそうだ。確かに、本書
に収められているような作品を創ることができれば、どこに行っても通用するだろう、と
妙に納得してしまった。
また、天賦の才能としか呼びようのない適切な言葉選びや、豊富な語彙も素晴らしい。
現在の日本が世界に誇ることのできる、稀有な才能を是非とも堪能して頂きたい。