蛍の淡い光の様に、生きて消えていった二人の兄妹の物語
★★★★★
ジブリ映画で有名な野坂昭如氏の同名小説のコミック版です。
表紙はこの文庫シリーズ共通の、原作者をイラストにしたもので、漫画の絵柄は裏表紙を見てもらうとわかります。
私は裏表紙の絵を見て即買いましたが、このMANGA BUNKOシリーズの他の作家さんたちと比べると、親しみやすく読みやすい絵だと思います。ホーム社のHPで数ページの試し読みが出来ます。
三堂司氏の描く節子がたまらなく可愛いのですが、母親の死や親戚に邪険にされ傷付き、飢えや病気で痩せこけ変わり果てていく姿は見るに耐えません。
清太が節子の長い髪を三つ編みに結って、「かわいいで」と言ってあげますが、その節子には元気いっぱいで目をキラキラ輝かせ無邪気に笑っていた、かつての面影は無く・・・。そして石ころをご飯だと言って「どうぞおあがり」と差し出す目も虚ろな節子を見て涙する清太、この二人の兄妹に私も涙が止まりませんでした。
敗戦後、薄暗い防空壕の中で小さな一つの命が消え、妹の面倒見のいい優しい兄、清太も駅の構内で野垂れ死にします。
兄妹一家全員が、戦争によって悲惨な死を遂げる、誰一人救われる事のない結末は、戦争を経験した作者が戦争の凄惨さを私達に訴えたかったからではないか、と今更ながらに思います。
先にも書きましたが、三堂司氏の描く節っちゃんがホントに可愛いので是非読んでみて下さい。