行間から滲み出る心象風景
★★★★★
若い読者に手に取らせようという企図だと思われるが、「恋と友情、どっちを選びますか?」などといったキャッチコピーで表現されるような、浅薄なテーマの作品ではない。
発表から長い歳月を経た今なお多くの日本人に読み継がれるに相応しい、重厚な名作。
行間から真実が滲み出るが如き格調高い日本語に身震いさせられる。
すべてを語らず、読み手の脳裏に余韻を含ませる文体は、今日の作品にはなかなか見られないのではないか。
構成においても、語り手の帰省先での日常の描写や時間経過を第二章として挟み込むことにより最終章を際立たせており、漱石のクリエイターとしての技巧の高さにも目を見張る。
タイトル「こころ」は秀逸。これ以外の題名はあり得なかっただろう。
高校生時分に読んで以来、数十年を経て再び読み込んでみると、当時とは全く違った観点から物語が胸に迫ってくる。
さらに二十年後に、もう一度読んでみたい。
漱石と同じ日本人に生まれた幸運に感謝。
夢中で読みふけっていた。
★★★★★
この本を引き込まれるように読んでしまいました。
登場人物の一人である「先生」の心理描写が、非常に痒い所まで描かれているように思えたからです。
私の未熟さによるものかもしれませんが、その表現の素晴らしさにただただ驚いていましたし、
それを通り越して痛々しく感じる時もありました。
あなたも、そんな気分に浸ってみませんか?
ノスタルジック
★★★★☆
学生の時の授業で取り上げられてからしばらく経ってから全部読みました。
日本人特有の自己完結人間の話、というと身も蓋もないのですが、当時の雰囲気や明治時代の価値観が鮮やかに描かれていて惹きこまれます。
特に、夏の情景が素晴らしい。なんともノスタルジックな気分にさせられます。
コミック版こころ
★★★☆☆
現在、こころの漫画版はかなりたくさん出回っている。出来としては、イースト・プレスのこころ (まんがで読破)ほど極端にひどく歪曲した内容ではないが色々と重要なポイントが抜けており、ダイジェスト版みたいな作りになっている。
敢えて原作を読まずに漫画だけで済ませたいと考え、また読み比べる気もないのなら学研のこころ (名著をマンガで!)をおすすめする。
うーん?
★★★☆☆
先生は本当に悔いているなら奥さんに嘘を吐き通して死ぬまで面倒見てやるくらいの気概を見せて欲しかった。
結局辛いから逃げただけでしょ。別にそれをしてしまう弱さというのは理解できるし、この話の重要なファクターなのだとは思うけど
その弱さを退廃的に美化しているような筆調が癪に障った。なんかイマイチ