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日暮れてこそ (光文社文庫)

価格: ¥780
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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挫折も失敗も受け入れて、前へ進む強さ ★★★★★
金融経済小説の大家と言える著者が新境地に踏み込んだ力作です。
舞台は銀行ではなく、主人公は退職後に物書き転じた中年男性。
どこか著者と似た環境の主人公の元にかつての後輩と名乗る女性からメールが届きます。
その出会いをきっかけに少しずつ崩れていく平凡な生活。
衝撃的な性描写もさることながら、主人公を惑わす2人の女性を中心に展開されていく
ミステリー小説とも言える展開はものすごく読みごたえがあります。

ストーリーのキーワードとも言える『ミッドライフクライシス』は
誰にでもいつか訪れる危機であることを暗示しながら、
リストラやニートなど社会問題に対する警鐘も含めて綴られていきます。
辛く苦しい中でも、ただひたすら家族の為、会社の為、そして信念の為に生き、
自らを省みることすら許されないような激動の社会を走りぬいてきた中高年層に、訪れる挫折や失望。
過去の清算とは、過去の出来事をやり直すことではなく、
過去に抱いた失敗や忘れたいような経験すらも、
自らの胸にしっかりと抱いて責任をもって歩き続けることだと気づかされます。
定年間近の方だけではなく、世の中の男性にぜひ一読してもらいたい作品です。
日暮れてからの不思議な人生。 ★★★★☆
団塊の世代で、銀行組織の束縛から解き放れて、一足先に自由を得て自分で生きる道を選択した池澤。昔若い時に大阪支店で一緒だったという女性とその娘の出現、同期入行で出世頭の銀行常務、就職難の一人息子、家庭の内と外で様々な事件が交錯し、前半から中盤以後もどうなっていくのか固唾を呑み中々面白い。しかしながら終盤は少し無理がある展開と結果になり、惜しい気がする。ただこれまでの江上剛の作品とは明らかに違い、従来の銀行に絡む同じような作風から一皮むけた印象があり、今後に期待をつなげた作品だと思う。
中年危機 ★★★★★
気づくか、気づかないかの差こそあれ、誰もが中年危機に陥る。そして、それからの現実的な救済を求める人もいれば、非現実の救済をこころに抱く人もいる。一種のミステリーなので、筋を書くことができないが、これまでの江上剛の世界とは一味違った雰囲気を醸し出している。このストーリーをあり得ないと思う人は、幸せというか、まだ中年危機に陥っていない(いずれ陥る)と言えるかもしれない。