鎌田先生は第一級の学者であるにもかかわらず、素人の我々の目線にまで降りてきて丁寧に教えてくれる。その親切な姿勢は、些細な語にまできちんとルビを振ってある点にもあらわれている。
「火山のすごさを読者に伝えるためにはどうしたらよいか」
これが鎌田先生の執筆の最大のテーマであったと思う。そのために文章を学び、謙虚な態度を尊び、現在進行形でおもしろがっている自分の姿をいきいきと伝える。僕がおもしろければ、みんなもおもしろい。そしておもしろいことこそすべてのエネルギーの源だ、という先生の声が聞こえてくる。
火山の凄さ、厳しさ、恐ろしさや、力強さ、大きさ、美しさ、優しさ、温かさ、といったさまざまな表情を、読者を思う親切な心で綴った快著である。火山もすごいが、鎌田先生もすごい。
2000年、有珠山と三宅島が相次いで噴火した時、本書によれば「三つ目が噴火したらもうだめだった」というエピソードには驚いた。観測機器や人手が圧倒的に足りなくなるらしい。
日本の活火山はまだ沢山あるというのに・・・。
これから、火山の研究者はもっと増えてほしいが、セントへレンズで命拾いしたグリッケン博士が普賢岳の火砕流で亡くなった事実は、危険と隣り合わせの火山噴火の研究の大!変さもしみじみと考えさせてくれた。
この本を持って、静かになった山々をまた訪れてみたい。