無私の愛情
★★★★☆
愛すべき安楽椅子探偵物『ママは何でも知っている』などの「ブロンクスのママ」シリーズ(都筑道夫の『退職刑事』の元ネタ)で知られる著者の初期作品集。カーの影響をもろに受けたタイトル通りの不可能犯罪物の連作だが、正直若書きの印象はまのがれず、特に「袋小路」のトリックは非科学的で噴飯もの。ただし「皇帝のキノコの秘密」はスマートな解決、意外なオチの傑作。
しかし何といっても本書の読みどころは、まるで子供のような年齢の著者を激励し導いていくエラリー・クィーン(フレデリック・ダネイ)の無私の愛情に溢れた[EQMM]]掲載時の解説にある。そのミステリへの愛に深く感動する。