斉の建国
★★★★★
趙高の詐術でもって、二世皇帝となった胡亥は、始皇帝を越える圧政を行う。そんな中で起こった陳勝と呉広の乱から、各地に「王」が立ち、少し前の戦国時代に戻ったような様相を呈してきた。
この巻は、主人公田横の知、仁、勇兼ね備えた人格の素晴らしさが、いろんな場面で披露される。その結果が斉の建国であり、将軍職への就任である。その一方で、ついに魏に助力する形での対秦との戦いが始まり、乱戦の幕開けへと進んでゆく。
次の時代を開く劉備と項羽は、まだ項梁の陰に隠れた存在である。
宮城谷作品を読んでいると、論語、老子、荘子の言葉がそれとなく出てきたり、この言葉の由来はここにあるんですよと何気なく語られる。この巻でも「刎頚の交わり」の由来が登場する。漢字ひとつに対するこだわりも強く、コンピュータでは出せない漢字も多い。それでもこれだけ読みやすいのは、作者の筆力の凄さなのだろう。