時は18世紀、オーストリア継承戦争を背景に、己の出自を捨てた主人公が真の居場所を
見つけようと奮闘するお話の後編です。

　時間軸は継承戦争（第一次シュレージエン戦争〜第ニ次シュレージエン戦争を経て
フランツ・シュテファンが神聖ローマ帝国皇帝に戴冠するまで）の間になります
。ここに主人公の出自を捨ててオーストリア人になろうとしても受け入れてもらえず
かと言って元の地に戻ることは・・・という−自ら選んだ道とは言え−困難に次ぐ
困難を著者は持ってくるのです（それでも主人公は燃え尽きるのではないかと、いう
くらいに粉骨砕身で取り組むのです。強すぎる炎は己すら焼いてしまうのです・・・）。

　結局、この小説は、ハプスブルク家と当時の欧州列強国間の、腹の探り合いという舞台で
自分探し、より分かりやすく書けば、生きる意味と、幸せとは何かを探そうとした若者の
物語なのです。

　若者は野望の果てに・・・自分を焼き切ってしまいます。その上で、新しい目標を
見つけるのですが・・・

　上巻同様、戦闘シーンや宮廷でのやり取りなど、活字の中か舞台が透けて見える筆力
には、読者を引き込む力があります。

　そして、主人公の心の動きは・・・一部、唐突感も受けますが、前編に比べるとより
丁寧に描かれています。なので、彼が感じた希望や、その後にやってくる絶望感が我が
事のように伝わってきます。

　これはハードカバーの分のレビューになりますが、現在は文庫版が入手可能です。
欧州歴史物に興味がある方、ハプスブルク家（特にマリア・テレジア）に興味がある
方には、面白く読めるのではと思います。

～　慣習に縛られ迫害され続けることに疑問を抱いたユダヤ人青年が、ユダヤを捨て、18世紀初頭のオーストリアで栄光と挫折、恋と友情を経験し、真実を見出す人生を描いた大河小説。主人公は架空の人物であるが、歴史背景が細かく描写されており西洋史に詳しくない人にも読み易い。

　改めて思い返すと話がうまく出来すぎている感はあるが、それを補って余在る～～構成力と歯切れの良さがあり、強烈な情熱を持った主人公に読み惹き込まれた。また、フランツ、マリア・テレジア、フリードリヒといった実在した登場人物の個性も強く、読んでいて飽きなかった。

　読み終わった後、主人公のその後を考えさせるラストも素晴らしいと思った。～

ハプスブルグ家を継いだマリア･テレジアに列強諸国がその刃を向ける。エドゥアルトは激動のヨーロッパで自らの才気を認めさせるために翻弄する。しかし、マリア・テレーゼへの愛情ゆえの確執とフランツへの友情、そしていつまでもユダヤに縛られる自分に苦悩する。

　「ハプスブルグの宝剣」の下巻。前巻に引き続き読み応えのある一冊。登場人物の人間ドラマもさることながら、国々の駆け引きなども面白い。実在した人物や出来事にここまで違和感なく溶け込んだ主人公を書いた作者の技量は見事としか言いようがない。前巻に引き続きぜひ読んでみてほしい一冊。

この本を読んだのはかなり昔で小学生のころです。でも子供でも感動できる作品だし、結構繰り返し読みましたけどツクヅク面白いな～！て思いました。マリア・テレジアが性格悪くて憎たらしいですけどね・・まあ実在人物だし大后妃とか言われてますから控えめに言った方がいいんもかもしんないけど。でも何で主人公がこの女と危うく恋に落ちそうになったかは今思ってよく分かりませんが・・旧恋人のアーデルハイトの方が一億倍慈悲心もあり人間的にも素晴らしい女性（しかも美人？！）なんだから、こんなわがまま＆超ユダヤ人差別ヤローといちゃつくなよっと言いたくなりました。マリア・テレジアが、主人公がユダヤ人と知った瞬間から偏見に満ちた冷酷な態度をとるようになった時は本当最低な奴やなーって感じだったけど、最後のシーンで主人公がアーデルハイトと再会した時、嫉妬心に燃えるマリア・テレジアにはざまあみろって感じでしたね。密かに心の中でガッツポーズしました。ブイッ！・・にしても、この話はめちゃくちゃ気になるところ終わってしまい、オイオイどうるんだよ～！？と言いたくなります。あらかじめ言いますけど。でも、まあこういう終わり方もありなのかな～？と今は冷静な感想です。とにかくとりあえず読むしかないでしょ。ヨーロッパ大大大好きの私が読んだヨーロッパ関係の本は、この本が初めてですけど、激動のヨーロッパ（詳しくはオーストリアのハプスブルク家）を背景にした恋あり友情あり戦いあり家族愛あり、で泣けます。本当にオススメ！！

　ハプスブルグ家を継いだマリア･テレジアに列強諸国がその刃を向ける。エドゥアルトは激動のヨーロッパで自らの才気を認めさせるために翻弄する。しかし、マリア・テレジアの愛情ゆえの確執とフランツへの友情、そしていつまでもユダヤに縛られる自分に苦悩する。

　「ハプスブルグの宝剣」の下巻。前巻に引き続き読み応えのある一冊。登場人物の人間ドラマもさることながら、国々の駆け引きなども面白い。実在した人物や出来事にここまで違和感なく溶け込んだ主人公を書いた作者の技量は見事としか言いようがない。前巻に引き続きぜひ読んでみてほしい一冊。