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ハプスブルクの宝剣〈上〉 (文春文庫)

価格: ¥700
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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生きる意味を問うのは素晴らしい、ただ恋愛部分に難有り ★★★☆☆
 舞台は18世紀のウィーン。マリア・テレジアとフランツ・シュテファン(フランツ1世)の
結婚を巡り、諸国が怪しげな動きをする中、己の出自を捨て、オーストリア人として生きる
ことにした主人公の活躍を描いた一冊。史実をベースに、フィクションを巧みに織り交ぜた
筆力は流石です。端役に至るまで、表情や動きが絵として浮かぶのは素直に凄いと思うのです。

 戦闘シーンも(ここではポーランド王位継承戦争に伴うネッカル河の戦闘)、(それが
メインなので素晴らしいとは言わないまでも)やはり一連の流れが絵として浮かんでくるのです。

 しかし、残念なのは人の心の機微に関しては、正直弱いのかと。特に主人公は出自を捨てて
まで、新しい人生を歩もうとする割には(原因は恋心にある)、惚れやすいのです。
「生涯このような気持ちになることはないだろう」的なセリフを吐く割には、その恋が破れたら
即、別の恋に乗り換えるのです。

 更に、周りの登場人物も簡単に彼を受け入れてしまうのです(それだけの魅力をもった人物
であることは、本文中で描かれていますが・・・)。

 魅力的な設定&キャラが多い分、もったいない感を受けるのです。

附:上巻は「オーストリア継承戦争」が始まる手前で終わります。
情熱と野望、ロマン溢れる物語 ★★★★★
来年度宝塚歌劇にて舞台化される作品で、
とても有名なハプスブルク家を知りたい気持ちもあり、
一度読んでみようと手に取りました。

上巻は、複雑な事情とある事件からユダヤに疑念と嫌悪感を持ち、
宗教を捨て改宗・改名した主人公、エリヤーフーの苦悩と葛藤を中心に描かれています。
地位と身分の確立を求めて出会う人々との友情・絆・愛僧など、
壮大な歴史背景と登場人物の性格・心情が巧みな文章によって描かれており、
最初から最後まで目が離せず、吸い込まれるように一気に読んでしまいました。

忘れる事の出来ない過酷な過去を背負いながらも、
オーストリアで情熱と野心のままに生き、
国のために尽くそうとどんどん強くなっていくエドゥアルトはとても魅力的。
聡明で思慮深い彼が、何故マリア・テレジアのような女性に惹かれてしまったのかは
個人的に理解できませんでしたが(笑)物語全体としてはとても面白く、ロマン溢れる内容でした。

歴史に詳しくない私でも、大変楽しく読めました。
宮廷外交のエッセンスを満喫 ★★★★★
ハプスブルク家を中心にしたヨーロッパ外交のエッセンスが、小説の楽しみと共に理解できる興味深い本である。フランスとオーストリーが覇を競い合った17世紀末から18世紀の前半にかけて、マリア・テレジアが未だ若かった時代のオーストリーに対し、新興のプロシアの若きフリードリッヒ大王が挑戦する軍事と外交の歴史を背景にして、複雑怪奇な政治交渉についてのとてもいい解説書になっている。これを読むだけで小泉や安倍という全く無能な政治家が、外交のイロハも分からずに日本の立場を損なっている様子が、嫌というほど痛感させられるのは作品の持つ説得力のせいだろうか。登場人物は多彩だが実証的に書かれているので、若い人が日本の外交のダメさ加減を知るために、この本を読んだら良いのではないかと思った。
18世紀ヨーロッパを理解することができる ★★★★☆
18世紀ヨーロッパ、国民国家成立前の政治状況と、当時のユダヤ人の社会的位置づけのようなものを、
小説を楽しみながら理解することができます。
当時の国家というものは所詮王族の持ち物であり、王族の結婚ひとつによって領土範囲が変わってしまうという、
今では考えられないような出来事が、なぜ起こりえたのか、史実を追いかけるだけでは分からないことが伝わってきます。
(要は国民国家が成立していなかったことに尽きるわけですが)
また、ユダヤ人については、ナチスによる大虐殺が起こった下地のようなものが、ヨーロッパ社会に古くから存在しており、
それが単なるヒトラー個人の暴走によって生じたものではないことが分かります。
小説の楽しみ以上に、有益な情報を得ることができました。
王朝史を背景に自己を求める青年の物語 ★★★★★
主人公が自己と民族/文化の狭間で葛藤し続けるつつ成長をしながら苦悩、絶望、野望、挫折そして再生を経る過程に一貫性があり、この本の強さがある。加えて当時欧州を馳せた歴々の登場人物がどれも人柄豊かに描かれており愛着が持てる。
ハプスブルグ王朝史に限らず当時のヨーロッパ一体の動向やエピソードが、綿密な史実調査の賜物であると同時に、堅くなく紹介している所が流石。特に面白かったのは、1)あまり取り上げらることのない中近代何百年にわたる欧州でのユダヤ差別/迫害。ナチス統治下でなくともユダヤ人は第二市民扱いされ、職業/居住の自由を持たず、穢れた者として侮蔑され、追放され、スケープゴートとして殺されることも多々あったに違いない。本書にも些細な争いから村人がユダヤ人狩りを行う場面が登場する。ハプスブルグ王朝における統治者オーストリア/ドイツ人以外の民族の生活は恵まれないものだったに違いない。この点に目を向けた筆者を高く評価したい。
2)巻末の批評にあった通り、ハプスブルグの多国籍軍の内情が緻密に、実に面白く書かれている。ドイツ系、ハンガリー系、クロアチア系、etc.言葉も文化も異なる混成軍の統率が如何に困難であるか、加えてハプスブルグ優位主義の指揮官の下であったなら混沌を極めるも必須。対してプロイセン軍はカリスマ国王フリードリヒ統括の下鍛え抜かれている。戦況は如何に!? 戦場でのやり取りなどが目に浮かぶ様であった。
唯一合点がゆかなかったのは、主人公がなぜそれまで小馬鹿にして来た様なデレーゼに恋したのか。それ以外は全て満足のゆくプロット満載でとても楽しみました。