2112
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おそらくラッシュにしか、それも70年代という時代でしか、こんなことはできなかったはずだ。出世作となったこの1976年のアルバムのタイトル曲となった組曲「2112」は、滑稽なまでに仰々しい先進的なロック・オペラで、変わり者のドラマーが作曲し、いかれたヴォーカリストが甲高い声を響かせている。そして図らずも、優雅なアコースティック・サウンド(「Oracle」)からスリリングなメタル・サウンド(「The Temples of Syrinx」)まで、バラエティー豊かなムードと構成をとおして、リスナーを高みに昇らせるすばらしいロックンロール・トラックに仕上がっている。さすがのこのトリオでさえ、以降の作品では叙事詩的な英雄伝説といったテーマを後退させることになったのは、ひょっとすると限界までコンセプト主義を取り入れてしまったことに気づいたためか。本作は今でも、あのプログレッシヴ・ロック時代のすばらしい入門盤となっている。(Michael Ruby, Amazon.com)