1997年にベネッセコーポレーションより刊行されたものに加筆して復刻された、大人に読んでもらいたい絵本。
今は、のどかな森のほとり、ひとりの兵士が死んでいる。1時間前、兵士は生きていて闘っていた。2時間前、兵士はひとり道に迷っていた。…10日前、恋人にプロポーズをし将来を誓い合った。バスケットボールが好きで高校時代は毎日していた。8歳の時、近所の犬の顔に落書きをしておこられた。
この絵本は戦争の絵本でありながら、戦争を描いたものではない。今は死んでいるひとりの兵士の人生を誕生までさかのぼっていくのであるが、その人生はあまりにも普通で、だからこそ胸に響く。ニュースでの戦死者は数で語られることが多く、その映像も現実味のないもの。しかし、そこで死んだ兵士のみならず一般の民衆にも、それぞれ普通で当たり前の幸せがあったのだということに気付かされる。シンプルな絵に簡潔な文章。淡々と描かれるそのページの余白に、何かを考えずにはいられない。(小山由絵)
客観的な表現がとてもリアルに心に残る作品
★★★★★
シッタカブッタシリーズとは画のタッチは異なるが、非常に感慨深い作品だった。感情とは距離を置いた画のタッチと文章が、逆に戦争のリアリズム(普通の人が戦争に駆出されること)を突きつけてくる。国境線に関わるニュースが取りざたされる中、手元に置いて読み返したい本。
ブタさんのシリーズとは趣が変わっています。
★★★★★
タイトルの通り戦争で死んだ兵士が生きてきた中で起こったエピソードをたんたんと感情を交えずに、死から誕生へと辿っています。そこから何を感じ取り、何を思うかは読者に委ねられています。運命の残酷を感じる人も居れば、戦争の悲惨を感じる人も居るでしょう。でも、なんだこれ?と感じてしまう人も居るでしょうね。そんな本です。
私には、大切な一冊です。
命をもっと大切にしたいと思える本
★★★★☆
これほどシンプルで心にググっとくる本にはそう簡単には出合えないと思います。
熱帯雨林の湖のほとりでひとりの兵士が死んでいるところから始まり、
時間が逆行していきます。
「1時間前は生きて闘っていた。」
「8時間前は戦友と一緒に基地で朝食を食べていた。」
「10日前、恋人にプロポーズして将来を誓い合った。」
・
・
「24年前のきょうこの世に生をうけた。」
若くて将来がある、24歳の兵士の一生がモノトーンの絵と
簡潔な文章でつづられています。
シンプルであるからこそ想像力をかきたてられ、なんともいえない余韻を
残してくれる一冊です。
想像力を
★★★★☆
息子(小学4年生)のクラスの読み聞かせに持っていきました。
戦争や平和についてのテーマで本を選んでくださいとのことでした。
担任の先生と少し難しいですよね。。と打ち合わせしたのですが。。。
読み聞かせる前に、子供たちに私なりのコメントを話しました。
当たり前のように、明日に何があるかなんてなにも考えずに生きている自分たちのこと。
それは私たち大人も含めて、この本を通して考えてみたいね。と話ました。
私は母親としての感想をのべました。大切な子供を授かって大切に育て、自分も子供からたくさんの幸せをもらい、その幸せがいつまでも続くように祈りながら生きています。
それはどの親も皆同じで、その子供が戦争によって一瞬に奪われてしまう悲しみを想像したら心臓がドキドキするよ。。。
みんなはみんななりにこの戦争に命を奪われた戦士の気持、その親のこと、一度想像してみてください。と話しました。
本も小さくモノクロで、読み聞かせに向いていないのかもしれませんが、9歳の子供たちにも
このような本でじっくり9歳の子なりの想像力を引き出す機会があって、良かったと思いました。
誰でも読めるし、ほぼ同じ感情を抱くはず。
★★★★★
こういうの系の本は大変素晴らしいですね。
テロや戦争のニュースを見るたびに、自分も頭の中で同じような光景を繰り広げていましたが
具現化してくれている方がいるんだーと思って、大変うれしい気持ちになりました。
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以下ネタばれというか、ちょっと本の内容になるので、
この先をお読みになるかはご判断にお任せしますが、自分の感想です。
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忘れ去られてゆく悲しさ、せつなさと同時に、
フィードバックとして生きてきた変遷を淡々とライトに、あくまでもソフトに辿っていくという構成。
やはり言葉、文字以上に絵の訴える強さをまざまざと感じました。
こういった本は言葉なんて不要なので世界中で読まれると良いと思います。
場所ごとに文化が異なるので、ある程度の複数の構成を作る必要はあると思いますが、
大変素晴らしい試みの本であることを称賛いたします。
改めて本を開くのは物悲しくなってしまいますが、これは幻想でもなく現実です。
過去も現在もある無数の兵士たちを物語っているファクトなので、必ず向き合うべきですね。
素晴らしい本です。