著者の心と精神の闇の一部が表出した佳作3編
★★★★☆
この小説に収められた3編は共同通信記者時代に戦地等の悲惨な土地を渡り歩いた辺見氏の心と精神の闇の一部が表出した物語だと感じました。
1.赤い橋の下のぬるい水・・・ある異常な体質を持つ首の長い美しい女とその女の異常性に魅かれ、病んで行く保険会社の若者の二律違反の物語
2.ナイトキャラバン・・・ハノイ駐在員と当地の風俗業を営む下層の人々の日常の出口のない倦怠と微かな命の輝きの物語
3.ミュージック・ワイヤ・・・自ら輝く力を失いいつか破綻せざるを得ない閉塞的な家族とそこに光を指す自らは心に闇を背負った男の一時の邂逅(精神の回復)と別れ(=元の破綻すべき日常へ回帰する)物語