これが人生
★★★★★
ボーリング場が閉鎖することは、そんなに珍しいことではないし、
印刷機だって若干傾いていることだってあると思います。
そんな一瞬を切り取り、人間の生活をうまく表現しています。
肩の荷が下りる感じのする連作集
★★★★☆
冒頭の「スタンス・ドット」では、村上春樹の初期作品のような、ちょっと洒落たシチュエーションでの滅びを描いたような印象を受けた。しかし同じ風景を背景にした連作を読んでいくにしたがって、この地方の静謐な日常とか重荷にならない人情というものが一種の理想郷であるように感じた。
登場人物は誰もが主人公であり、脇役である。それぞれの抱える事情は異なるが、誰もが悲壮にもならずに淡々と過ごし、他者との関わりも時間的な長さの割には、さらりとした感じで、これも理想的だ。
何気なく手に取ってみると
★★★★★
こんな味わいの短編集は経験したことがありません。穏やかで静かな語り口で登場人物たちの日常が「雪沼」という架空の町を下地に、さりげなく展開していきます。これは正直に地道に生きる人たちの物語ですが、細かな所まで気配りがなされ、他人の話のはずが、実は自分の周りに生きている人たちにも大いに共通するところがあると感じさせる筆力に感嘆します。それにしても、何点かの作品に共通する終わり方には驚きました。唐突だと感じる反面、なんともいえぬ残響音を残す。独特の余韻が味わえます。書店で何気なく手にとってみただけなのに、こんな満足感を得られるなんてつくづく幸運でした。
喧騒とはかけ離れた、静謐な世界を淡々と描いている
★★★★☆
「雪沼」という土地に働き、暮らす人々の何気ない逸話のひとつひとつに
緩く繋がりを持たせた連作短編集。
喧騒とはかけ離れた、静謐な世界を淡々と描いている。
作中を流れる精神的とも云える時間の流れがかなりゆったりとしており
共感するためには自分もそのペースにあわせなければならない。
次々と移り変わる刺激ではなく、何かをひたすらリフレインすることによって
得られる小さな悟りのようなものを見つけなくてはならない。
そういう意味で本書は読者に読む努力を強いるものでもあり
例えばタルコフスキーの映画をそのまま見ていられず
早送りしてしまう人には不向きだろう。
短編それぞれの最期には必ず物語に亀裂が入る、
デモーニッシュは破綻がある。この効果については
賛否両論あるのではないだろうか?
纏い
★★★★★
こんなに雰囲気のみえる小説は、はじめてかもしれない。
別に悲しいわけじゃないんだけど、少し閉じてて静かな空気が全編を通して伝わってくる。
静謐できれいなお話。
本当にどこかにありそうな雪沼と、その周辺に起きた小さな物語。
多分好き嫌いが分かれる作家さんだと思いますが、私はだんぜん好きです。