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おぱらばん (新潮文庫)

価格: ¥460
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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秀逸のエッセイ集 ★★★★★
本作品は堀江氏が仏に留学中、見聞された事柄に基づいて著された15編のエッセイ集。全体的に氏の何事にもこだわる性格と探究心が好い方向に働き名文を残したと思う。後に、その性格が禍して「もののはずみ」という本に結実する。個人的には「熊の敷石」や「めぐらし屋」「スタンス・ドット」よりもこちらの方が文体、内容共に好みである。「おぱらばん」中国人が仏に留学するのはケ小平や周恩来の流れかと考えてみたりした。「以前」という単語を中国人が発音すると外国人には「おぱらばん」と聴こえるという。また、それが中国人を揶揄するときにも使われるらしいのだが、気の毒に思った当の相手に卓球でコテンパンに負かされる。それにしても中国の「中仏簡易単語対照辞典」の古めかしさよ。今は新しい辞書で奮闘されているのだろうか。「BUEU,BLUES,BLEUET」仏の氏の友人がルーマニア人女性のために、下心を持ちながらも一肌脱いで活躍したところ、何も報われなかった切ない話。「ドクトゥール・ウルサン」人と人との出会いに私は改めて心動かされたという一文を書けることが羨ましい。「留守番電話の詩人」氏が河馬に魅せられ、ここでも拘りを大いに発揮して、名のある河馬の使用済み切手を収集していく。「洋梨を盗んだ少女」氏はスーパーで洋梨を盗んだ少女を目撃。後に少女の祖母に当たるらしい女性が近所に住む高名な画家でありオブジェ作家だったとわかる。「貯水池のステンドグラス」伝説的な詩人ゲラシム・リュカの謎の死を考察する氏の記述は仏学者の領域だ。「床屋嫌いのパンセ」氏が何故床屋嫌いなのか、理由をのべたてているのが面白い。その他「ボトルシップを燃やす」「音の環」「黄色い部屋の謎」「クウェートの夕暮れ」「手数料なしで貸します」「M]「珈琲と馬鈴薯」「のぼりとのスナフキン」と続くが何処から読んでも楽しめるのがエッセイ集の良いところだ。
言葉が大好きな人に ★★★★★
少し前に、「そう、おぱらばんに!」おぱらばんって何?と思いながら、読んだ本です。
フランス、パリのことが書いてありますが、そして著者が「フランスのこと」を書こうとしていたかどうかはわかりませんが、私は「フランスのことを読んでいる」と思わずに、ただ楽しく読みふけりました。小説のようでもあり、(いわゆる)エッセイのようでもあり、ときどき評論のようでもあります。
本を読むのが好きで、外国語を勉強するのが、文法とかも嫌いじゃなくて、母語以外の文化圏で何かを理解しようとするってどういうことなんだろう?などと考えるのが好きな方にもお薦めします。
風景が浮かんで消えてゆく ★★★★★
一節を読むごとに風景や空気感まで立ち上っていく随筆集です。いつものことながら文章の旨さが際立っています。行った事がないフランスに堀江さんの文章と一緒に旅しているような錯覚にとらわれます。すごいことだと思います。
幻想的な『貯水池のステンドグラス』に興味をそそられました。『のぼりとのスナフキン』も登戸をちょっと知っているわたしにとって、興味深いものがありました。
素晴らしい! ★★★★★
短編集というか、エッセィというか、散文というかは、作者本人にも特にジャンル分けを意識して書いていないと思われす。読まれた方それぞれが判断すれば良いかと。

しかし短編一つ一つが素晴らしい出来です、きっといつかまた読み返したくなるそんな作品ばかりです。

表題作の「おぱらばん」も一体どんな意味の何の言葉なのかはあっと言う間に分かる、そこまで読めば何と言う事も無い不思議な響きの言葉が、短編を読み終わると、その言葉がひどく愛らしくまるで手の中に納まった子猫の様に感じられます。

その他にも単館上映されている映画のタイトルの様な作品名の「留守番電話の詩人」(この話しはかなり好きです!いくつもの全く関係の無い小さな流れが絶妙の関係で合流してこのタイトルの元へと流れ込んできます!最高です)、視覚的広がりと美しさを連想させるタイトルの「貯水池のステンドグラス」(私にとってのベスト1です!ゲラシム・リュカ、いつか読んでみたいです)、タイトルから想像していたカラミになっていったにも係わらずさらに深い仕掛けと繋がりを与えられた「黄色い部屋の謎」、等どの作品も素晴らしいです!
パリを取り上げた折り目正しいエッセイ集 ★★★★★
「おぱらばん」は,パリにいる中国人が発する「Auparavant」である。パリ市内で暮らし,様々な人々との接触をきっかけに,市民生活から社会問題までをとりあげ,小説,絵画,音楽を語るというエッセイ集である。ともかく文章がうまい。パリの風景の描写が素晴らしいだけでなく,重層的な内容を極めて明晰に語ることのできる文体である。