戦国時代というと歴史の本をみても男の名前しか出てこない。
しかし、戦国時代が戦場を駆け巡る男たちの時代であったと同時に
同じ業火の中を生きた女たちの時代であったということを
決して忘れてはならないと思う。
この巻においても著者はそれをしっかりと書き込んでゆく。
家康の正室築山御前と側室お愛の方、お万の方、
夫と別れ、城を出る浅井長政の妻お市の方、
奥平貞昌の「妻」として刑死するおふう、
無念の最後を遂げる徳姫の付き人小侍従
夫と共に死ぬ事を選ぶ大賀弥四郎の妻お松。
単に戦国時代を「男の戦い」だけで書かないところに
この小説の深さが生まれていると思う。