本能寺の変、家康の伊賀越え、明智光秀の山崎の戦いでの敗戦を
描く本巻にもさまざまな男たちの思惑が去来する。
しかし
信長は戦国終焉に向けて心に炎を燃やしていなかったか?
自分なりの信念にしたがって信長を討った光秀はどうだったか?
己の人生のターニングポイントと見切って全力を傾けた秀吉は?
命からがら三河に逃げ帰り、秀吉のパワーゲームを静観した家康は?
みなが心に炎を燃やしていたとしたら、
非業の死を遂げた信長・光秀と権力を手にした秀吉・家康の間には
いったいどんな差があったというのか。
そこにきっと何も差はなかったのだろう。
人々の生死を繰り返し見ていくと、そこにどうしても
人間の意志を超える巨大な意志が存在することへ
思いをいたらせざるを得ない。