中盤のエピソード
★★★★★
どんな番組でも中盤は内容が緩くなってしまうというのが普通ですが,この『新・仕置人』は中盤にもたくさん面白いエピソードがあります。
第10話の仕置を逆恨みされ鉄・己代松・主水が窮地にたたされる「逆恨無用」,正八の初の主人公編であり鉄・己代松・主水の3人のキャラクターの違いを殺陣や細かいセリフにまで散りばめた佳作,「代役無用」,寅の会の危機や鉄が最も苦戦したチーム同士の壮絶なバトルシーンなど,『新・仕置人』を観るうえで欠かすことの出来ない「元締無用」,屋根の男の登場や鉄の『KISS』ばりのド派手なメイク,主水の思わずドキッとする殺陣などの魅力も満載の,己代松の家に上がり込んできた姉弟と己代松との交流を描いた「質草無用」,豪雨の中の殺陣には特に力が入っていて,己代松の雨傘に短筒を仕込んだ新兵器や主水と仙蔵の一騎打ちなど見応えある,「訴訟無用」,三本杉を仕置するという大仕事に挑むメンバーの以外な仮装や己代松らの逃走路を拓くため,用心棒4人を相手取る主水が見せたダイナミックな太刀捌きなど見所の多い「濡衣無用」,自分の命の恩人でもある旧友の約束と鉄らとの間で苦悩する己代松が印象的な衝撃作「約束無用」,刀の魔力に取り憑かれた男の末路を描いた,主水と左母次郎の一騎打ちが素晴らしい「妖刀無用」,後に左門も使用した人体二つ折り&背骨折りなど恨みの籠もった技を披露する鉄の殺陣や屋根の男とのシーンなど笑いどころも満載な,鉄の恋を描いた「良縁無用」などまだまだ細かい所を挙げればきりがない程です!!!
虎ガ怒ッテイル…!!(死神風)
★★★★☆
必殺ファンの間では言わずもがなの傑作であります!私事ですが、必殺をちゃんと意識して最初から最後まで一話も逃さず観た、最初の作品であり最高の作品でした。以来、必殺にハマッてからというものテレビで放送されれば欠かさず観る毎日が、今もつづいている今日この頃、金銭に乏しいそんな私(T_T)が所有している数少ないDVDの一つがこのBOXなわけです。さて、すでに発売されている子之巻、寅之巻に比べ少々、グレードが落ちる感が否めない丑之巻。子、寅ほどの重要な話はあまり出てきませんが、やはり秀作ぞろいで、シッカリ、長く、この世界観に浸りたい方(例えば私のような人)は必須と言えます。秀作の一つで私がもっとも印象に残っているのは第19話「元締無用」です。寅の会の危機、元締 虎に娘!?と見所満載です。また、この作品に出演されている故・花沢徳衛さんの演技はさすがの一言!虎役の故・藤村富美男さんの存在感は、既存の役者とは一線を画する絶大な存在感があります。星4は値が張ったので。
正直
★★★☆☆
パワーダウンと他の前期必殺シリーズに比べて、
脚本に出来不出来の差が大きい気がします
まぁ他のシリーズより長いので仕方ないとは思いますが。
しかし、そこを補ってるのが出演者の演技力。いまいちな話でも
彼らの演技を見てるだけで十分満足
善意なんか信じられるか・・・
★★★★★
中盤に入り,主水・鉄・巳代松の三人の個性と生き様が生き生きとしてくる。特に江戸のガンマン・巳代松が主人公となる回はどれも傑作。仕置の現場を目撃されて危機に陥る「密告無用」,更正しようとする島帰りの青年に世間の冷たさを説く「善意無用」,長屋に転がりこんだ子供との交流を描いた「質草無用」,旧友が実は悪党であり,自分の命を救ったのも保身のための行為であったことを知って苦悩する「約束無用」等々・・・単なる娯楽物に終わらず,観る者の胸に強い衝撃を与える新仕置人の世界をたっぷり堪能していただきたい。
反転する「仕置人」
★★★★★
シリーズの初期に良く設定されていたのが、「葛藤キャラ」と「非葛藤キャラ」の対比と言う構図。
つまり組織や世間と自己の間で激しく葛藤している、「社会内アウトサイダーキャラ」と、フリーランス的立場で、一歩引いた所から社会に関わる、極めて個人主義的な「非社会的アウトサイダーキャラ」(過去編等で描かれる問題や葛藤も個人にまつわる物が多い)とのせめぎあい、と言う図式ですね。
そして、様々な設定や性格で表現されてきたこの視聴者の「共感」と「憧憬」を引き受ける2系統のキャラにあって、最初期にして極めつけだったのが、旧仕置人における主水(前者)と鉄(後者)だったと思う訳です。
前振りは長くなりましたが、今回の「新」ではこの二人のポジションが反転している点が最大の特徴だったのでは、と思います。最も非組織的な鉄が、裏社会である「寅の会」に組み込まれてしまった事で描かれる、決定的なストレスと、その反動としてのコミカルな日常描写は、誇張はされていますが、いわば旧作での主水が奉行所や家庭で虐げられていたのと同じ意味合いであり、鉄が社会との「葛藤キャラ」として存在しているのが判ります。
一方主水の方は、家庭と職場、そして裏稼業さえも管理下に置かれてしまった事で、殺陣と共に一種異様な居直りを見せる様になり、言わば旧の鉄が持っていた社会に対しての傍観者的スタンスを、裏の社会に対しても持つようになります。(これは表の組織人の主水ならではの設定だし、その決定的なきっかけが一話になっているのも上手い)つまり主水は鉄と入れ替わりに「非葛藤キャラ」へと転じ、以降のシリーズでもそのスタンスを通して行くのです。
あたかも、互いの獲物を入れ替え殺しを行った時の平内と文十郎の如く、双方の意味合いを反転させた主水と鉄。
追い詰められた鉄は、より表情豊かでダンディズム溢れるキャラになり、主水はより深みとしたたかさを発揮するキャラへと変貌します。
ただしある種の高みに立ったこの二人だけでは、「同情」と言う被害者とのウェットな関わりが展開上難しくなってしまいます。そこで設定されているのが、正八と巳代松の二人。我々視聴者同様「殺し」が出来ない無力な正八と、怒りを以って「殺せる」松。言わばここにも、(主水&鉄とは別軸の)「共感」と「憧憬」が仕込まれている訳です。
後のシリーズへの功罪も含め、様々なトピックを持つ本作ですが、視聴者(少なくとも当時の)との深度の図り方の絶妙さは、やはりある種の頂点だった様に思うのです。