と思う。かつての類書がとかくアカデミック・ディベートの紹介や教室
用のハウツーにとどまりがちであったのに対し、本書はディベートの意
義・効用を解き明かしながら日本人の言論風土に真っ向から取り組むと
いう、意欲的な試みをおこなっている。その意義は「思考・表現技術」
「調査技術」「コミュニケーション技術」「問題解決技術」に分かれて
おり、著者の豊富な体験にもとづき、論理的に説明されている。特に最
終章「ディベートを社会に活かす」において、日本人にはとかく硬質・
冷徹に映ったり、単なることばの揚げ足取りをするだけの印象であった
りするディベートが、ビジネスをはじめとして、この国でさまざまな仕
事をする人々にどう役立てられるのか、わかりやすい実例を用いて説得
力ある持論を展開している。コミュニケーションに関わる書籍中でもと
りわけ質が高い本書は、この分野の定本と言っても良いであろう。