Empyrean Isles
価格: ¥1,176
ピアニスト兼作曲家ハービー・ハンコックのキャリアは実に長く多岐にわたるが、彼はアーティストとしてはもちろん商業的にも成功を収めてきた。ただ両方同時にということはあまりなかったが。彼のアーティストとしてのピークは、初期の衝撃的なブルーノートからの2作、『Maiden Voyage』と知名度はやや落ちるが『Empyrean Isles』であると思っているファンが多いようだ。1964年録音の『Empyrean Isles』は先に発表されただけでなく、内容も過激だ。ハンコック・カルテットは今作で、フレディ・ハバードがいつものトランペットに替えてコルネットを担当、洗練されていながらより暖かいサウンドを披露している。ジャズには欠かせないサックスは抜きで、ほとんど各パートむき出しのバンド・サウンドになっており、シングル・ホーンという編成が、ハンコックのムードたっぷりの曲調と即興の境目をぼかしている。このグループは特に「間」を意識し、ハンコックとドラマーのトニー・ウィリアムスは担当パートの通常の役割を逸脱し、ハバードを粋で難解なインタープレイに巻き込んでいる。その一方、ベースのロン・カーターが演奏の舵取りを行っている。ハバードは時折輝くような、アイデアにあふれた演奏で呼応しており、その流れるようなプレイは、ジョン・コルトレーンやオーネット・コールマン、エリック・ドルフィーといったミュージシャンとのアバンギャルドなコラボレーションで培われたものだろう。爽やかな「Oliloqui Valley」からファンキーな「Cantaloupe Island」、そして不協和音連発の長編「Egg」に至るまで、今作は60年代中期のブルーノートに台頭してきたスタイルを象徴する最も重要な1枚。統制とリスクのバランスに挑戦した意欲作であり、ハバードのプレイもモダン・ジャズ史に輝く出来。(Stuart Broomer, Amazon.com)