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朱夏 (新潮文庫)

価格: ¥961
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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同じ引揚者として ★★★★★
私も引揚者であることから関心を惹き読んだ。19歳で生後間もない乳飲み子を背負い、開拓団の教師である夫と共に大陸に渡り、まもなく敗戦、引揚げまでの地獄の日々。生きるには少なく死ぬには多すぎる、食物をめぐる人達の生活がそこに展開される。

国民党、中共、ソ連軍が入り乱れての当時の大混乱の中で、今まで支配されていた満人と立場が逆転、押し寄せた暴民に欲しいものは皆やるから命だけは助けてくれというと、荷物など何も要らない、日本人全員の命が欲しいと返答される。

作者の女性らしい細部に亘る克明な描写、次々と立て続けに事件は起こり、だれて飛ばし読みなどの気は少しも起こらない。内地に帰り体験を語るも、苦労したのはあんた達だけじゃないのよと聞いてもらえず、書く事により残そうというのが物書きになった動機だそうだ。

作者は53年後にモンペ姿で現地を再訪、すっかり穏やかな満洲の人々に囲まれ、日本の開拓団から受け継いで作られた陸稲の米飯をご馳走になり感激する。そこには長い時の流れが必要だったのだろう。





満州で生き抜くことの壮絶さ。 ★★★★★
「朱夏」は宮尾登美子氏の、「櫂」「春燈」に続く自伝的小説の3作目。
18歳で田舎の教師と結婚し1女もうけ、そして男達は野望と、金銭面、そして
戦争からの逃げとし、開拓民とともにその子どもらの学校を設立する・・・
という目的で満州に渡る。
が、満州の生活にお嬢様育ちの綾子が耐え切れるはずなく我がままほうだい
だったが、終戦・・・襲ってくる挑戦民、難民キャンプで『野良犬以下』の
生活を強いられ、次第にたくましくなってくる綾子に目を見張るものの、
相変わらずの《お嬢さん》に、読み手としてはイライラしてくる場面もある。
しかし、戦後満州から引き上げてくる形を小説として読みやすく
まとめてあり・・・終戦後の大陸移住日本人について、初心者からわかりやすく
読み進められる。
「満州」に向き合う迫真のリアリズム ★★★★★
満州における敗戦前後、530日余の凝集された出来事を本書にたどると多くのことが脳裏に去来する。満州での日本人の生活はどんなだったか 敗戦前後でどう変わったか?人間は、過酷な境遇にどう耐えたか、耐えられなかったか?人間は、植民者としての行動や極限状況の行動をどのように意義付けて平安に生き続けようとしたか?地位、職業、欲望とはそれぞれ何か?植民者としての民衆は、植民地でどう行動したか?中国人は終戦を挟んでどう行動したか?そして、結局、満州とは何だったのか?

答の一部は事実描写と主人公綾子の考えと取り巻く人々の言動で示され、いくつかは暗示でとどめられる。著者の経験に基づく、迫真のリアリズムである。

子の世代が親の世代より前進するには、親爺の背中やおふくろの味、親たちの成功と失敗など、親たちの世代と向き合ってそれを超えようとするのがもっとも確実な道ではなかろうか。現代の若者たちが、父母や祖父母の世代のことをしっかり理解し継承することは、これからの時代をより良いものにするためにとても大切なことだと思う。宮尾さんは、そのような理解を得る格好の事実を自らの経験の中から紡ぎ出して文学に結晶させてくれた。
生きる力 ★★★★★
この作品に出会って人生の見方が変わったと言っても、過言でない一冊です。冬は暖かく、夏は涼しく快適に過ごすことに知恵を絞る現代社会がいかに豊かで人間を弱くしているか、つい50年ほど前の日本人がどんなに強かったかを知り、遅ればせながら日々大切に過ごしたいと思いました。