権力に反抗する松本清張。
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この一冊には下記の5つの事件について、松本清張の視点で解説が加えられている。
・陸軍機密費問題
・石田検事の快死
・朴烈大逆事件
・芥川龍之介の死
・北原二等卒の直訴
これらの作品が書かれた時代は高度経済成長中、東京オリンピックに日本中が湧きかえっているなか、昭和の事件を読み解いているのがおもしろい。
軍人が官僚化し、陸軍内での派閥争いの過程で生じた事件が陸軍機密費問題だが、世界大戦へと突入するきっかけが生まれたといっても過言ではないだろう。このなかで、代議士の中野正剛が国会質疑で機密費問題を取り上げていく。中野正剛は戦中、東條政権を批判して憲兵隊の弾圧の結果、抗議の割腹自決をしている。中野の葬儀委員長は戦後の自由党総裁である緒方竹虎である。文中、早稲田の学生で進藤という男を中野正剛が連れていたとあるが、この進藤こそ敗戦後に戦争犯罪人として巣鴨に収監され、衆議員議員、福岡市長を歴任した進藤一馬である。
すでに、松本清張が執筆中には素姓が分かっていたはずだが、それが記載されなかったのが不思議である。
また、「北原二等卒の直訴」を読んでいて「爆弾三勇士」を思い出した。自爆覚悟で敵の鉄条網を突破した三人の兵士を称えたものだが、その実、この兵士たちは被差別部落出身者であったという。軍隊での差別を跳ね返すために危険な軍務に従事したのだという。それは目前の敵というよりも、日本のいわれない差別から守るためであったともいう。
この差別ということに関して、ある意味、松本清張は朝日新聞という組織に苦しんだ人だった。
孤立無援のなか、黙々と軍隊組織に抗する北原二等卒に松本清張の姿が重なる。
行間から松本清張の社会に対する憤りが湧きあがってくる。反面、庶民に対しての優しい眼差しを投げかけているのを感じる。いまだ、松本清張作品の人気が衰えないのは、清張がこういった視点を持ち合わせているからだろう。
昭和史の闇
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人気推理小説家松本清張の書いた昭和史です。膨大な資料に基づいて書かれたと思われ、その考証には、説得力があり、とても興味深く面白く読めます。昭和の闇に光りを当てていると思います。陸軍機密費問題やそれに関わる石田検事の死や芥川龍之介の死が1巻には収められています。特に理軍機密費問題は、陸軍の裏金をあつかっつており、政治と金の問題でもあり、まさに、現在の政治でも通用するテーマだと思います。丁寧に書かれており、さすが松本清張の著作だと思いました。労作です。
昭和史を学ぶのには最適。
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昭和史に関する作品は、たくさん出版されています。その中で、一番確かな作品のようです。多くの史料をもとに昭和の事件をを取り上げ、日本が間違った方向へと進んでいく様子を綴っています。真に昭和史を発掘している大作です。歴史の興味ある方はぜひ読んでみてください。この値段で昭和史を学ぶことができるんですね。
清張の神髄ここにあり
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推理・サスペンス小説作家として名高い清張氏は、実に時代考証の鋭い分析力、洞察力、そしてなによりも情報収集能力にすぐれていた。この本から始まる昭和史上の事件や出来事を氏ならではの視点で切り開いていく。掛け値なしに、面白い。知的好奇心をくすぐられる。