柴田よしきの作品は幅広い。女性刑事を主人公にした『RIKO-女神の永遠』(第15回横溝正史賞受賞)で、心に傷を負いながらも懸命に闘う女性の姿を描き、一方、現代の京都を舞台に妖怪たちが暗躍する奇想天外な伝奇小説シリーズなども手がけている。本書は、著者の多彩な作品のうちでも、かなりポップな物語である。そして、とにかく主人公が魅力的だ。次々に舞い込む災難を不器用ながら乗り越えていく様、女ったらしなのにフェミニスト、子どもたちに注がれる深い愛情。完全無欠のヒーローにはない人間らしい弱さを見せながら、愛する者のためひた走る主人公の姿に、男女問わず魅了される読者は多い。(冷水修子)
本書は前作『フォー・ディア・ライフ』の続編。主人公は前作と同じ花咲だが、前回同様に今回も命をかけた捜査が続きます。前作と同じく、脇役もしっかりとした存在感で、花咲に仕事を回す切れ者の探偵事務所の所長の城島、医師会からつまはじき!にされている女医の奈美、花咲の最愛の女性・理紗、花咲の元妻で弁護士の麦子……など、それぞれに展開に相応しく登場し、物語を盛り上げています。前作よりもやや迫力不足のようには感じましたが、引き続きシリーズで読みたいと思わせる展開で、花咲の苦闘が読み応えに繋がっています。