論集に寄稿しているのは、カントやヒュームなど「講壇哲学」にも明るい若手研究者たちで、知的所有権、内部告発、エコツーリズムといった新しい問題にも挑戦している。たとえば堂囿俊彦は、原発の事故隠蔽を丁寧に分析しながら、企業における技術者が職能集団としての自律性をもつ必要性を説得的に説く。奥田太郎は、たんに内部告発を奨励するというジャーナリスティックな視点ではなく、ジンメルに依拠しつつ、人間の生そのものの本性としての「秘密を持つこと」の重要性にまで考察を深める。とても刺激的な論集だ。