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ビジネス倫理学―哲学的アプローチ (叢書 倫理学のフロンティア)

価格: ¥2,625
カテゴリ: 単行本
ブランド: ナカニシヤ出版
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経営倫理学とは大いに違う! ★★★★★
良い本が出たものだ。従来の日本の「経営倫理学」は、経営学者や実務家が、不祥事に対応する企業の倫理綱領や、企業の組織論を考察するものだった。それに対して本書が提唱するのは、哲学者や倫理学者の視点からする「ビジネス倫理学」である。それは、アメリカの「ビジネス・エシックス」の影響を受けてはいるが、日本の現実と渡り合い、現代社会における「ビジネス」の普遍性に対応する「応用倫理学の交叉点」であろうとする展望と意欲をもつ。

論集に寄稿しているのは、カントやヒュームなど「講壇哲学」にも明るい若手研究者たちで、知的所有権、内部告発、エコツーリズムといった新しい問題にも挑戦している。たとえば堂囿俊彦は、原発の事故隠蔽を丁寧に分析しながら、企業における技術者が職能集団としての自律性をもつ必要性を説得的に説く。奥田太郎は、たんに内部告発を奨励するというジャーナリスティックな視点ではなく、ジンメルに依拠しつつ、人間の生そのものの本性としての「秘密を持つこと」の重要性にまで考察を深める。とても刺激的な論集だ。