本書は、そうした口コミのもとになる消費者間のつながりを解明してくれる。とくに、口コミやそのコミュニケーションを示す「バズ(buzz)」というキーワードから、それが「伝染する」ネットワークのしくみや特徴が順序立てて論じられている。情報が誰を起点に、なぜ、どのように流れていくかがつかめるはずだ。取り上げられているのは主にアメリカの口コミ商品だが、映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』など日本で話題になった事例もあり興味深い。
また、注目は「バズ」をコントロールする方法だ。本書は、「自分自身を広告する製品」や「利用者が増えるほど便利になる製品」といった「バズ」を生む製品を持つこと、ネットワークの「ハブ」に当たる人に直接働きかけることなどを提案。後者については「ハブ」の見つけ方や接触のしかたを詳しく説明しているほか、広告との相互作用やインターネット上のバイラル・マーケティングにも言及している。
口コミのつかみどころのなさからか、それを広める決定的なアイデアとは思えないものも多い。しかし、消費者間のネットワークを丹念に分析し、概念化している点は注目で、マーケティングの下地になる要素が多数見つかるはずだ。ヒットの「仕掛け人」には必見の1冊である。(棚上 勉)