著者は「語用論的背理法」によって、この問題を捌いてゆく。「語用論的背理法」とは、言葉で語られた意味内容の中に、その言葉を語っている主体という言語外の事実を組み込みながら、論理の「境界」を探究する方法である。それは、宇宙の物理学的解明のために、物理的過程を「外から」意識する「我々」の存在とパラレルな事態である。前半の「論理学入門」は、この「語用論的背理法」を導くための序章なのだ。この方法によってデカルトの「我思うゆえに我あり」や独我論などの「超難問」も解けると著者は言う。この点については、評者は必ずしも賛同しないが、本書は哲学の研究者にも読んでもらいたい刺激的な書物である。