この著者だからこそ書けた素晴らしい一冊!
★★★★★
女装に関する日本の歴史と文化をとてもわかりやすく説明しています。
著者の経験談や仲間の話も豊富に含まれていて、実際に女装をしている著者だからこそ書ける内容でしょう。
ヤマトタケルの話に始まる古代から、新宿女装コミュニティの話を中心とする現代まで、興味深い内容が本当にドンドンでてきます。
約370ページと新書にしては分厚いですが、読みやすい文章なのでスラスラ読み進めることができるはずです。
また、著者自身は自分のことを性同一性障害だとは思っておらず、単なる性別越境者だと規定しています。この理由については「おわりに」で触れられていますが、ここに本書で著者が言いたかったことが濃縮されているように思います。ここだけでも読んでみる価値はあるのではないでしょうか。
本書を読むまでは、女装とホモセクシュアルを混同していたように思いますが、同じ様な人にこそ是非読んで頂きたいと思います。
著者の経験に裏打ちされた、内容の濃い本当に素晴らしい一冊です。
女装と日本の歴史について
★★★☆☆
「女装」についての歴史について、丁寧に解説されています。
実は、日本の歴史での「女装」については深い歴史があるという事。
そして、昨今での性別不一致が病気かのような風潮に対して、著者は疑問を投げかけています。
その謂れに対しても、こちらの本を読めば納得のいく内容になってます。
内容がとても濃い新書
★★★★★
この値段でこれだけの情報、さらに人間のあり方まで考えさせられる新書はそれほど多くない。日本文化史やジェンダー関連の問題に興味のある読者でなくても、楽しい歴史の旅をしながら新たな視点で、私たちの国の文化の奥行きを考えることができる。新しい知の楽しみと同時に、魅力的なライフストーリーを読む喜びも与えてくれる。
女装家が果たすべき文化的役割
★★★★★
「女装」を通して、日本の神話や宗教、歌舞伎や戦後のニューハーフ文化の変遷を書いた本です。性別を超えた存在とされる女装者が果たしてきた社会的役割(神・祭への奉仕、神と人との仲介、社会的弱者である女性の相談役、男女の仲介など)や文化の系譜を深く掘り下げた内容であり、衝撃の1冊です。人それぞれ果たすべき役割があることを考えさせられます。
親切で丁寧な新書です。
★★★★★
“女装と日本史”という視点で書かれた大層読みやすい本です。
ヤマトタケル伝説や南西諸島の「双性の巫人」にはじまって、王朝時代〜徳川時代の稚児や芸能者、陰間の世界、明治以降の「近代化による変質現象」、そして現代の女装コミュニティに至るまでの通史が1冊の新書にまとめられています。
とりわけ、著者の「性同一性性障害」を、「学問的権威で病名をつけ、精神疾患をもつ者として囲い込み、『治療』という形で『正常化』しようとする『19世紀以来の欧米の精神医学による負の価値付け』に過ぎない」との批判・喝破には誰しも共鳴を覚えるに相違ないでしょう(この指摘は、今なお同性婚を合法化しようとしない日本という国家の「人権を公然と無視して憚らない姿勢」に相通じる差別思想を鋭く剔抉するものに他なりません)。
惜しむらくは、本書が江戸〜東京という関東地方を中心に記されていることで、次回は長い歴史と伝統文化を誇る京都・大阪など上方に視点を据えた「異性装の日本文化史」といった書物を是非とも執筆して頂きたいと願います(e.g.井原西鶴の作品に見られる四条河原に於ける色子遊びや近松門左衛門その他、有名無名の執筆者による記述、民間習俗に残る女装など)。
さらに、古代オリエント社会の神殿男娼や、ローマ帝国がキリスト教化さるまで地中海世界に広く栄えた大母神に仕える自宮神官をはじめとする「トランスジェンダーの世界文化史」といった内容の書籍も、機会があれば記して欲しいと存じます。