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戦争と戦後を生きる (全集 日本の歴史 15)

価格: ¥2,520
カテゴリ: ハードカバー
ブランド: 小学館
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顔の見える物語で知る戦争と戦後の時代 ★★★★★
 よりよい生活を求めて、日本・朝鮮・満州にまたがる日本の勢力範囲内を、ひんぱんに長距離移動するようになった昭和前期の人びと。本書は幾人かの典型的人物に注目し、その足跡を具体的に描きだすことによって、1930年から1955年までの戦争を通して変革の道を探る歩みだったとも言えるこの時代を、顔の見える感慨深い物語(これは"history"ではなく"story"だという者もいるかもしれないが)として提示する。

 あるものは、経済的理由から自発的に、またあるものは、強制的に動員されて、そしてあるものは、メディアが報じる国策を、自己の果たすべき義務と信じて、遠い距離を移動していった。本書は、その理由が国家や個人の「生存」の仕組みが大きく変わり、「生存」が危機に瀕していた当時の時代背景にあることを、様々な人びとの「ライフ・ヒストリー」を通して明らかにしていく。

 他にも、「大東亜共栄圏」だけでなく、現在しばしば語られるナショナリズムの超克をめざす「東亜共同体」という考え方が当時からあったこと。国民に参加・同調を求めた、政府の経済統制・国民総動員政策が、周囲に同調しやすい現代日本人の性格をより強くしたこと。同時にその国策を支えるために、国民健康保険等の福利厚生が整備されたこと。当時の工場では、職員と工員の間に大きな待遇格差があったこと。軍歌「歩兵の本領」がメーデーの歌と同じ曲ということ等々、興味深い事実を教えてもらった。

 本書を読むことによって、国家総動員法による戦時動員(1938-45)とGHQによる占領改革(1945-51)という二重の衝撃が日本社会を激変させ、「イエ」制度の解体や終身雇用の普及を促し、結果として経済的・社会的平準化の進展をもたらしていく歴史の流れがよく理解できた。
素晴らしい通史。読み応えあり。 ★★★★★
本書のキーワードは「生存」。人々の生存が危機に瀕し、生存の仕組みが大きく変わった1930年代から50年代半ばまでの四半世紀における歴史を、普通の人々の「経験」と国家の対応との相互作用を軸にして描き出すものである。恐慌以来、「生存」が危機に瀕する中、大日本帝国という空間にあって人々は生存を賭けて移動し、また、動員され移動を強いられた。帝国が瓦解するや彼ら彼女らの前には国境の壁が高く立ちはだかることになる。抑留、引き揚げ、残留、在日といった形で現れる人々の経験が著者の聞き取り調査によって証言という形で再構成されている。女性や子供、地域、在日などにフォーカスする様々な先行研究の蓄積と、人々の「経験」を重視する著者独自の調査によって引き出された「声」との間を往復しつつ、読者は戦争と戦後の時代を生きた普通の人々の様々な経験に感情移入しつつ、いまを生きる私たちのよって来たるところを考えさせてくれる。

「生存は、戦争という非常事態下にのみ該当する歴史のテーマではない。どの時代でも生存を核にした歴史が構想されるべきである。」(P367)著者も言うように、国家や経済といった大きなイシューのみならず、人々が直面した生存の危機や生存するための苦闘に焦点を当てつつ、大きな政治史と人々の経験との間を往復する、そんな歴史を描くことが求められていると言える。著者のスタンスに大いに共感する。
庶民は戦前・戦中・戦後をいかに生きたか ★★★★★
 太平洋戦争前後で断絶を見出さず、連続した視点を本書はとる。「国家」「社会」「戦争」といった大きな枠ではなく、庶民の視点から、それぞれの時代をいかに生きたかにひたすら密着していく。ここが本書の「売り」といえよう。 
 ジェンダー論や在日コリアンといった現代的なテーマについて取り上げている。
 ややとりとめのない印象もあるが、当事者の聞き取りや実施調査により、太平洋戦争を生き続けて来た人々の生の姿に迫る。本書でないとみられないであろう写真がとにかくインパクトがある。