子供に見せたい
★★★★★
定年退職し、イギリスの田舎に引越した老夫婦。
ロンドンに住む息子一家とは、たまに連絡を取りつつ、静かな暮らしを楽しんでいた。
そこへ、第三次世界大戦が始まったとラジオが告げる。
核ミサイルがこちらに向かっている、と。
夫は事前に配布されていた政府や役所のパンフレットに従い、シェルターを作っていた。
ミサイルがどこかに落ちた。爆心地はわからない。
家の窓は飛ばされ、部屋はぐちゃぐちゃだが夫婦は無事。
夫は妻を励ます。
「大丈夫、政府が助けに来てくれる。救助隊がこちらに向かっているよ」
政府の推奨したシェルターは、壁にドアを立てかけた物。
日本人なら子供の頃から見聞きしていた原爆の恐ろしさを何も知らない。
政府も教えていない。夫婦が知っているのは第二次大戦の経験のみ。
「放射能って何かしら?何も見えないわ」
「死の灰って何かしら?」
「変な味がすると思っていたら歯茎から血が出てたわ」
スノーマンの作者のふんわりとしたアニメーションだからこそ、じわじわと悲しさと怖さが増してくる。
残虐さを出さず、淡々としているだけに、よけいに打ちのめされるお話です。
大人だけではなく、十代にも観て欲しい。
真に恐るべきは…
★★★★★
私がこれを見て感じたのは核の恐怖ではなく、
無知の恐怖。
知らないという事はかくも恐ろしい事なのか…。
下手なホラーよりはるかに恐ろしい作品です。
見る価値のある作品です。
ずっと待っていた作品
★★★★★
この作品を始めて観たのはまだ小学生でした。核戦争の話とは知らずまだビデオでしたね。
でもずっと心に残っていました。
なんでDVD化されないのかと嘆いていたので嬉しかった。
日本語版だと先日お亡くなりなった森繁さんが声優をしています。
ちなみに絵本も購入してます。
絵本も手に取ってみてはいかがでしょうか。
せめてもの救い
★★★★☆
『風が吹くとき』の“風”とは、核爆弾投下によって発生する猛烈な爆風のこと。レイモンド・ブリッグスの原作絵本をアニメーション化した本作品は、原作に比べより反戦・反核メッセージが強いものとなったため、映画館における一般公開が見送られたという。というよりも、お子様向けのファンタジー『スノーマン』と同じ原作者とは思えないほど、内容がかなりブラックなのである。
イギリスの片田舎で隠居生活をしている老夫婦。大島渚が日本語監修を、森繁久弥と加藤治子が吹替えをつとめた日本語吹替版を鑑賞したのだが、(悪評高きジブリ作品のアフレコとは違って)なぜかピタリとはまっているのだ。戦争勃発の噂を聞いて、マニュアルをみながら簡易シェルターの準備にとりかかる爺さんに、こまごまとした家事をこなしながら小言をいう婆さんの掛け合いが、「ほんとに原爆なんか落ちるんかい」と疑いたくなるほどのんびりとした平和な雰囲気を醸し出している。
しかし一転、ラジオ放送の予告どおりどこぞの国から発射された核ミサイルがイギリス本土に着弾すると、この老夫婦の家屋はもちろん周囲の家々も一瞬のうちに焼野原と化してしまう。時折挿入される実写とおぼしき映像が、核の恐怖を増幅させる演出効果を発揮していて、被爆した(本人たちは気づいていないところがまた残酷)夫婦が次第に放射能の影響で心身ともに弱りはてていく様子が超リアルに描かれているので、お子さまと一緒に見る時にはそれなりの配慮が必要だろう。
髪の毛が抜け落ち、目が落ち窪んだ2人が焼け焦げたソファに横たわりながら、「政府がそのうちなんとかしてくれるさ」的な発言を繰り返すのだが、これがお上に対する(痛烈な)皮肉ともなっていることをけっして見逃してはいけない。「原爆投下」を支持する人が6割も締めているどこかの国民の中にもまともな考えを持っている人がいてくれたことが、せめてもの救いに感じられる1本だ。
はっきり言って怖いです。
★★★★☆
これを初めて観たのはいつのことだろうか?
当時、小学生かそこらだった自分は、テレビで偶然やっていたこれを観て
老夫婦の最期が心に焼きつき、トラウマとして残っていた。
はだしのゲンも同時期に観ただろうか?
しかし、心に鮮烈に焼き付いてしまったのは、こちらのほうだった。
子供心に、「二度と観たくない」と思った。それぐらい怖かったのだ。
やがてそのトラウマが、成長するに従って興味へと変化していく。
「子供のころ見た怖かったアレは、実際はどうなのだろう?」
大人の視点でじっくり観たいと思っていた。
はたして子供の頃と、同じ恐怖がそこにはあった。
しかし、当時は「死」に対して恐怖を感じていたのが、改めて観たらそれとは別の恐怖も内包していることに気付いた。
なんでもない日常が、核兵器という非日常によって破壊され
何よりも、主人公本人がそれを自覚しないまま、日常を送りながら死んでいく。
政府の出した指示通り、老夫婦はシェルターを作っていく。
自分たち観客はすでに知識を持っている。
核兵器の恐怖は、その破壊力だけではないことを知っている。放射能、黒い雨。
それを知っているからこそ、何も知らない老夫婦の行動に「違う!」と叫びたくなる。
日常に挟まれている老夫婦の行動が、淡々と進んでいくのだが・・・その行動があまりに的外れなため、画面からは緊張感が常に放たれている。
これは、恐怖映画だ、と思った。
自分の中では、これは「戦争映画」でも「反核映画」でもどちらでもない。
戦争と核という舞台装置を使って、これ以上ない取り返しの付かない恐怖が静かに語られていく。
老夫婦は繰り返し言う。
「明日になったら〜を買ってこよう」
「明日になったら〜をしよう」
日常を破壊されたことを知らず、日常を送る老夫婦は
それを何一つ果たせないまま、また明日も目覚めることを当然に思いながら死んでいく。
夫婦が所々で話す、経験、またはメディアから得た知識は、何一つ役に立たないまま終わっていく。
どんな後味の悪い恐怖映画も、生半可には太刀打ちできない恐怖がある。
異論もあるだろう、しかし自分には、これは紛れもなく恐怖映画なのである。
今回購入したDVDには、オリジナル音声と字幕、予告も入っており
また違った「風が吹くとき」を楽しむことが出来た。
作品としては星5つだし、文句無い。
しかし、DVDの仕様として難点がひとつ。
再生はじめに、CMが流れるのだが、これをスキップできない。
再生のたびにCMを観るか、早送りするしか対処のしようが無いので非常に面倒くさい。
観てもらいたいからこそのCMなのだろうが、これは嫌になった。
毎度初めにアレを見るとなると、若干気が滅入るので星をひとつ減らし、この評価です。