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日本アルプス―登山と探検 (平凡社ライブラリー)

価格: ¥1,470
カテゴリ: 新書
ブランド: 平凡社
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いろいろ楽しい本 ★★★★★
日本アルプスを知ってる人には、馴染みのある地名が頻出するし、登山口となる寒村の描写が多いため、理屈ぬきに旅行記として楽しく読めると思う。

もちろん、日本の登山史の基本資料としての意味もある。「日本の登山の恩人」と言うウェストン像は過去のものだと思うが、イギリスから遠く離れた極東で、のんびり山登りしていた人間の記録として読むと非常に面白い。ウェストンが生きていた頃の大英帝国は、アルプスからコーカサス、ヒマラヤと、帝国主義的な領土拡張と表裏一体の冒険としての先鋭登山が主流で、登山家としてのウェストンが高く評価されていたとは言いがたいが、その屈託が日本に対する謙虚な態度を生んだのだと思う。

御嶽登山の描写も興味深い。C・ブラッカーの「あずさ弓」の中に、ロープウェイ開通前の御嶽登山の記述があるが、ほとんどウェストンの頃と変わらない信仰を維持していたことが分かる。夏に御嶽に登って白装束の群れにびっくりした人にもお勧め。

蓮華温泉の風呂の写真なんかもあって楽しい。
100年以上前の「鶴瓶の家族に乾杯」 ★★★★★
NHKのテレビ番組「鶴瓶の家族に乾杯」は、笑福亭鶴瓶さんとゲストとが全国各地を訪問し、
初対面の家族との飾りの無い会話や、その土地の生活風景が楽しめる番組です。

ところでウェストン氏は明治期に来日、日本アルプスを目にしてその姿の美しさに魅了され、
登山家として「自分の足跡を残したい」欲求によって山々を巡る、というのが大まかな本書の内容です。
しかし私にとってこの本の最大の魅力は、ウェストン氏が登山の途中で見た日本の風景と、
同氏が出会った当時の日本人とのやり取りとに、多くの文章が割かれているところにあります。

「静寂」を美徳とする西洋人として、夜更けの宿屋でいつまでも止まらないドンちゃん騒ぎの隣室で苦笑するしかない著者。
一方、友人の医者が旅先で好意で診察した後、文字通り十重二十重におじぎをしてお礼をするお年寄り。
19世紀後期の日本人の長所短所がとてもよく描けています。
しかも著者は異国の地の風習を「上から見る」あるいは「珍しそうに見る」姿勢は全くありません。
だから100年以上たった今読んでも、著者の見方に共感したり、著者がたどった旅にあこがれたりできるのです。

著者の目的は確かに「登山」でしたが、日本人と日本の風景を本当に身近に感じてくれた姿勢と、
それを記録として残してくれたことに、日本人として素直に「ありがとう」と言いたいです。
山の歴史を知る ★★★★★
スポーツとしての登山が流行っているが、かつて日本では山岳信仰としての登山しかなかったのである。 本書は日本におけるスポーツとしての登山の歴史を知る上で貴重な実録である。当時の山岳辺境の暮しも目に浮かんで興味深い。あなたが山登りなら、ウェストンが日本アルプスを広く知らしめた功績をこの一冊で知るべきであろう。