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人間の絆 上巻 (新潮文庫 モ 5-11)

価格: ¥961
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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祝!再発! ★★★★★
長い間絶版になっていましたが、再発されてうれしいです。 モームを日本に紹介することに貢献した中野好夫訳ですね。
やはりこの作品、”月と六ペンス”と並ぶ代表作ですが、モームその人の内面・人生観に迫っているという点では最高作なのではないでしょうか。 言ってみればこの作品は”ヴィルヘルム・マイスター”、”ジャン・クリストフ”等と同じ教養小説の系列に入る作品なのでしょうが、この作家はゲーテやロマン・ロランのように崇高な人物も、人類の発展に寄与するような思想も描きません。 ある意味、文学というものにそういうとてつもない読書体験を期待する人には少々鼻白むような内容かもしれません。 しかし、不思議とここには人生に関する嘘がないーと、思わされるのです。 何か等身大の人生の暖かさというか、充実した人生を生きるってどういうことなのかーについて驚くほど素直なことが書かれていると思います。

そういうことをあらかじめわかって読んでいくと、ちょっとこれほど普遍性のある小説もないと思います。 主人公は素朴な善人に過ぎず、傍役たちはおかしな俗物ばかり。特にこの作家一流の諧謔趣味で描かれた俗人たちの描写たるや、抱腹絶倒です(あなたのまわりにもこんな人たちがきっといるはず)。少なくともここに書かれていることが約100年前のイギリス人の考え方であり、現代の日本人とはまったく共通点がない、と思う方はどなたもいないはずでしょう。人生は決して子供の頃夢見ていたようにすばらしいものではない。それでも人生はこんなに面白い。それがこの作品のテーマなのではないでしょうか。
傑作の中の傑作、人生に疲れたときに読む ★★★★★
 イギリスの小説家、サマセット・モームの自伝的小説。私が最も好きな小説家であり、敢えて「自分の今までで最も重要な本」というものを挙げればこれと『ナポレオン』である。生まれたときから蝦足の主人公は自分の身体にコンプレックスを抱きながらも、なんとか自身の人生の方向を模索する。モラトリアムのためにハイデンベルグに留学した後、芸術家を志しパリへ。しかし、努力では追いつけない才能と現実のギャップに直面し、イギリスに戻り堅実な道として医者を目指す。途中熱烈な恋愛に落ち、さんざん振り回された挙句に捨てられるという経験があったり、猛烈な努力をしていた友人が現実に耐え切れずに自殺したりと波乱万丈の人生。最後はハッピーエンドなわけだが、多くの人生経験の中で徐々に主人公が成長していくことが、あたかも自分の事のように感じられる作品。そのため、読み終わったあとは自分も人間として一回り成長したような気にさせられる。
 個人的に好きな部分はパリ時代の友人に「人生ってなんだろう?」と聞いたときに「これだね」といってペルシャ絨毯の切れ端を見せるシーンである。後に主人公はその意味を「ああ、人生に意味なんてないんだ。あの切れ端と一緒で。」といって納得し、それまで意思や体面にがんじがらめになっていた自分から解放されるわけだが、人生の意味に取り付かれながらも最後は自分なりに答えを出していく過程が如実に現れている。繰り返すが最高の傑作。人生に迷ったらこの本を。なんとなく、「ま、いろいろあるんだな、人生」などといいながら気が楽になる。
劣等感の克服のプロセス ★★★★★
人によって評価は区々だと思う。
文芸評論家の谷沢永一氏は本書をこき下ろして、同じモームの「月と六ペンス」を絶賛していた。確かに長編小説ながらラストの部分が若干急ぎ足で展開している感もある。しかし、私にとってモームというと「月と六ペンス」より「人間の絆」だ。
本は読む人間の能力や読む時期によって受ける印象が異なるため仕方がない。感受性に訴える小説はそのような傾向が強いかもしれない。その意味で思春期の私には本書の内容と読む時期がマッチしたにすぎないともいえる。

劣等感に苦しむ思春期の私にとっては主人公の心情が良く分かり、寝食を忘れて貪る様に読んだ。劣等感を克服すべく今でいう「青い鳥症候群」に陥る主人公の行動や、最終的に「ペルシャ毬」によって達観していく姿は自分自身を灯影したような気がした。劣等感の克服に関しての示唆を自分に与えた貴重な本である。