コピペの時代だからこその「書き写し」
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最近の本は、効率よく何かを成し遂げるためのテクニック、といった傾向のものが多いと感じています。
しかし、この本は効率とは対極に位置しています。
「書き写す」なんて効率屋からすれば、面倒きわまりない行為です。
ところが、文章をうまく書こうと思えば、書き写すことはすばらしいトレーニングです。
スポーツにおける筋トレ、小学生における漢字の書き取りみたいなものでしょう。
「名文家の作品を書き写してみろ」と先輩に言われて
「それならできる!」と喜んだ。
そう述べる著者の前向きさが感じられる一冊です。
単に「書き写すことがいいんだ」ということが知りたいならば、
この本を読まなくても、このレビューで十分かも知れません。
でも、この本には書き写しの次の段階といえる話も入っています。
一行も文章をかけない!という方。
まずはこの本を読んで、書き写してください。
それ「だけ」ならできるはずですから。
これでできなければあきらめましょう
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著書のタイトルどおり、
1日10分、名作を書き写すだけで
文章表現力が上達するでしょう。
名作は決して難解なものではなく、
誰にも親しみやすいからこそ
今も多くの方に読まれているのであり、
そういう意味からも
続けるにふさわしい名作が
紹介されています。
高校時代の書道の時間で、
写経をやったことを思い出しました。
創造は模倣から始まる。
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軍事の天才といわれるナポレオンが、こんなことを言っていた。
「私は天才ではない。数々の戦いに私が勝利することができたのは、
アレクサンドロスやカエサルに関する戦記を、若い頃に繰り返し
読んでいたからだ」
衆に秀でた人間には、すぐれた手本が存在するものである。
カエサルは常にアレクサンドロス大王を意識していたと言われているし、
アレクサンドロスにはフィリッポス2世という偉大な父王の存在があった。
このような歴史を紐解くまでもなく、すぐれた先人たちのノウハウを模倣することが
有益であることは、多くの人々が理解していることである。
しかし、文章を書くということに関していえば、そういったことが一般的に
重視されていないように思える。
昔の人は、すばらしい文学作品をみつけると、皆こぞって書き写しをしていたという。
私も以前、原稿用紙2000枚分ほどの小説を毎日2時間かけて書き写しを
試みたのだが、結局挫折してしまった。
この本によると、書き写しは1日10分で良いのだという。
題材として、宮沢賢治や芥川龍之介などの代表的な作品が、実際に
掲載されている。
それを書き写していくわけだが、ただ漠然と書き写すというのではない。
作品の一区切りごとに書き写しのポイントなどが説明されてあり、名文の
エッセンスを少しでも会得できるよう様々な配慮がなされている。
後半は、自分で文章を作り上げていくための、基本的なテクニックを
身につける方法が紹介されている。
様々なスタイルの文章を書くことができるように、、文章力の基礎を
総合的に底上げできるような内容となっている。特に、仕事で文章を書く機会が
ある人にとっては、有用性が高いといえる。
文章を書くのが苦手な人にとっても、ある程度文章が書ける人にとっても、
学ぶことが多い本だと思う。