ダニエル・アラスのすばらしい遺言
★★★★★
原題は『絵画の話/絵画の歴史』といったものなのですが、日本語のタイトルは俗悪ですね。でも邦題で引いてしまってはいけません。中身を読むと眼も心も洗われる気がします。『なにも見ていない』と同様に、絵画の細部から思いがけない見方へと誘い、また遠近法やルネッサンンス絵画についての歴史的展望あり、学問や鑑賞や修復のあり方への鋭い省察ありで、絵画について考える楽しみをたっぷりと味あわせてくれます。これをラジオで(!)語った故ダニエル・アラスもそれを聴いたフランスという国もほんとうに成熟を感じさせますね。
挿図が小さくて見づらいものが多いのはちょっと残念です。それから、訳注が少しついているのはありがたいのですが、翻訳者がもし美術史の専門家だったらわかるんじゃないかと思われるところで注がついていなくて、やや半端な感じです。