ほふく前進しながら進む、劇的要素がいっさいない美しい小説。
★★★★☆
この小説はおかしな話である。けれどどこか毒がある。毒のあるユーモア、けれどブラックユーモアとも微妙に違う。間抜けか?それも違う。狂気?しかし狂人が書いたにはあまりにも構成が繊細だ。どこかが、何かがそうでない。あくまで知的、徹底して知的なのだ。それは否定語であらわさないといけないのかもしれない。哲学的で哲学的すぎず、シニカルでシニカルすぎず、狂気のようで重たくはならず、牧歌的であり、牧歌的に浸りすぎず、ユーモアすぎず、シリアスが一切無く、しかし当事者たちは常に真剣であり、四苦八苦してあがいている・・・。常に意味の中間にゆらぐ、つかみどころのないお話なのだ。