孤高のピアニスト、マルのモノローグが聴かれる
★★★★☆
晩年のビリー・ホリデイの伴奏をしたピアニストであり、チャールス・ミンガスやエリック・ドルフィらとの共演でも、ユニークな作編曲の才能と前衛味を帯びたパーカッシブで特異なタッチの演奏で異彩を放って来たマル・ウォルドロン。彼の代表作はいうと、自ずと「レフト・アローン」ということになるであろうが、彼の世界が完全な形で端的に表されたという意味では、このアルバム「オール・アローン」を忘れるわけにはいかない。「孤高」とは彼のためにあるような言葉であり、悲しみや怒り、そしてそれを優れた芸術に昇華するマルのモデスティな精神には多くファンやミュージシャンがリスペクトを惜しまない。ここに表されている童歌のような素朴さと深い精神性は同時代のどのピアニストとも類型化しえない独自の存在だといえよう。