泥まみれの地獄。
★★★★☆
軍事や戦争をテーマにした博物館を、見学しているような体系的で分かりやすい構成が良く、第一次大戦の勃発から終戦までの流れを、政治家や将軍が描く軍略よりも、最前線で戦う一般兵の立場から見た感じがすごくリアルで怖い印象を受けました。特に塹壕戦がすさまじく、一進一退のこう着状態に陥った中で、いかに敵を多く倒すか、双方の知恵と工夫がいびつな形で表れており、塹壕の作り方一つとっても、新しい国境として、よろい戸つきの窓やドア・マットまで備えた快適な空間を目指したドイツ側とは対照的に、連合国側の考え方は、いったて簡素だったり、また樹木をカモフラージュにした見張り台や、機関銃の細かな改良、より悲惨な救急現場、そして突撃の瞬間と、兵士の手紙からの抜粋も含めて、泥の中で地獄を見た彼らや、空戦や海戦で英雄となり勲章をもらった若者たちの死は、決して戦争賛美や単純に兵器が格好いいなどと軽々しく思えるような雰囲気だけでないことは確かです。教科書で学ぶ内容よりも、遥かに戦争という重みを伝える一冊だと感じました。