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つづきの図書館

価格: ¥1,575
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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図書館はファンタジーの場所 ★★★★★
「離婚歴あり無職」の女性が、伯母の介護のため故郷に戻ることに決め、小さな図書館に臨時採用がきまったところから物語は始まります。子どもの文学の主人公に対して固定観念を持っていなかったとしても、この作品の主人公、離婚歴のある中年女性ははかなり異色です。上橋菜穂子さんの「守人シリーズ」のバルサでも、30歳そこそこでしたね。

偏屈な館長のためか、山神桃さんが着任する前にすでに3人の司書がやめたらしい四方山市立図書館下山別館は、遠くから見ると、「ツタのからんだサイコロ」みたいなこぢんまりした図書館でした。どんなに小さくても図書館は、博物館と同じように、時間と空間がぎゅっと凝縮され詰めこまれた場所です。図書館の資料の中には、過去から現在までにわたる本ばかりでなく、極小の生物の世界から無限の宇宙まで網羅した資料があふれています。ですから、ファンタジーの場としてこれほどふさわしい場所はないでしょう。というわけで、この新任の臨時採用司書、山神桃さんにも突然不思議な出来事がおそいかかります。

本を読む側としては、その物語の内容が気にかかるのは当然のことでしょう。「次にいったい何がおこるのか」「結末はどうなるのか」という思いにかられて、私たちは物語に熱中します。ところが、この作品は、本の中の登場人物が読んでくれた人の「つづき」が気になって、こちらの世界に現れでてしまうのです。

ある日、本の整理に図書館の二階に上がっていった桃さんは、突然声をかけられました。「つづきがしりたくてたまらん」と。なんと声の主は絵本の中から出てきた「はだかの王様」で、「青田早苗ちゃん」の消息を知りたいというのです。そして、桃さんは、青田早苗ちゃん探しにのりだします。早苗ちゃんの捜索が終わり、やれやれと一息つく間もなく、つぎつぎと、絵本の中の登場人物が捜索依頼をしてくるのです。

人捜しの中で、なぜ、その人物を探さなくてはならないのかという必然性が徐々に明らかになり、最終的には、桃さん自身の抱えていた問題も明らかになるという運びは、常套的であるともいえるでしょうが、ひねりも効いていて、あざやかです。また、絵本から出てきた登場者が気にかける子どもたちの抱えている問題が「いま」を映しだしている点では、たのしく読める作品ではありつつ、人間関係の複雑さや関係の不可避性に思い至らせ、考えさせます。だからこそ、おもしろいのかもしれません。

「はだかの王様」をはじめとする個性的な人物造型や登場者と桃さんとのやりとりなどゆきとどいた描写の細部が楽しい作品です。