以下に、私の心に残った部分を挙げてみます。
・勇氣はまた、深淵に臨んで眩暈をも殺戮する。人間はいずくにあつてか深淵のほとりに立たざるものぞ!見ることはすなわち -- 深淵を見ることではないのか?
・人間が人生を見ることの深さは、すなわち彼が苦惱を見ることの深さである。
・「かくの如きが人生であるか。いざ!いま一度!」かかる言葉の中には、多くの鳴り響く樂の音がある。耳ある者は、聴け。--
・幸福はわれを追う。その所以は、われが女らを追わざるによる。
・ある人の孤獨は、病める者の逃避である。また、ある人の孤獨は、病める者からの逃避である。
・最大の人間もあまりに小さかった!之ぞ、人間に對するわが憤怒であった!しかも、最小なる人間も永劫に回歸する!之ぞ、一切の存在に對するわが憤怒であった!あゝ、嘔吐!嘔吐!嘔吐!
・おゝ、わが魂よ、われはなんじに、暴風のごとく否を言い、雲なき空の如く然りを言う權利を與えた。なんじは光のごとく靜かに立ち、いまや否定する暴風のさなかを行く。
・われは今日の人間のための光であろうとは欲せぬ。光と呼ばれようとは願わぬ。われは かれらを -- 眼(まなこ)眩まそうと欲する。わが叡智の紫電よ!かれの眼をば抉り出せ!
その流れるような文体と含蓄に富む文章からは種田山頭火を想起しました。
一般に思われるような、いわゆる哲学書とは全く別物です。