なるほど、こういう文学もありなので、と思わず唸った。英語圏でありながら、ほんものの英語ではないところの面白さは、絶妙の翻訳でおぎなわれている。翻訳版で、原書で分からないところも理解できました。翻訳者の方、ご苦労様です。マジック・リアリズム系のラテン文学が好きな人ははまると思いますよ。ある狭い世界を舞台に、現実味がある、しかし有り得ない世界が展開していきます。世界は広い、これだけ力を持った作家がいるのだもの！

本書はノーベル文学賞受賞者による著作だけに高い期待を込めて購入したが、結果はいまひとつ。英語による文学の幅を広げたという理由で、ノーベル文学賞を受賞した書物だが、トリニダードトバコというカリブ海に浮かぶ島国で使われる独特の英語をそのまま使用した点に高い評価が置かれている。日本語に直してしまうとその独特の英語が当たり前ながら全く分からなくなってしまう（翻訳者の人は大変な苦労があったと思うが）。翻訳書と共に原書も購入して読み比べた方がいいように思う。