最終章は女の独白にて終わる
★★★★☆
16、17、18挿話を収録したユリシーズ文庫最終巻。
まず第16挿話では、スティーブン・ディーダラスと主人公ブルームが喫茶店に行き、仲が良くも悪くもない微妙な雰囲気のなか、
二人が語らったり、他の客のほら話を聴いたりいろいろ夢想したりする様子が描かれる。ユリシーズらしい文体の章。
第17挿話では、ブルームがスティーブンを自宅に招き、ココアを飲む様子が、問答形式で描かれる。
章全体が、問いと答えで構成されており、まるで論文のようになっているのが面白い。
第18挿話は、全てがブルームの妻モリーの独白。一章句読点ナシという悪名高き挿話である。
過去の交際やブルームのこと、今日浮気したボイランのことや生理のことまで、性的なことも含め、
寝る前に頭に浮かんだことを全て書き取ったような章になっている。
翻訳も勿論句読点ナシで文字を羅列しているが、驚くほど読みやすく出来ており、むしろ他の挿話より楽に読めた。
巻末には本一冊分ぐらいある注と、エッセイ・解説つき。因みに訳者のエッセイは何と旧かなまじりでやや読みにくかった。