カラーで哲学
★★★★★
私は美を創り出す側の人間ではないのですが、ふと、立ちどまったこともない美術関連の棚
で本書を手にとりました。これは美術の教科書で見たようなただの色見本ではありません。
作者からは彩りを愛する心だけでなく、力強い哲学を感じます。あとがき部分の抜粋ですが
「…いいイメージやアイデアを出すには、自分を否定してはいけません。(中略)他人とは
比較しないで、色や形が使える自分を認めてください。色彩の世界は楽しい世界です。
苦しむ必要はどこにもありません。…」
また、言葉で想いを表現するときに使われる豊かな〈形容詞〉をイメージの頂点にして、
実践的な色彩の分類(カラーパレット作り)をされています。それが修辞学的な分類では
ない分、新鮮な発見が得られます。
たとえば〈寂しい〉は「悲しいという気持ちよりは、少しだけ明るいイメージがあります。」
という作者の説明と同時に色群を鑑賞すると、「なるほど〈悲しい〉と〈寂しい〉の違いは
わずかな明るさが入るのかどうかなのか!」などと気づかされました。
書物でないのでぱらぱらと好きなところをめくり、言葉とそれにまつわる色彩グループを
目にするだけで疲れて折れた心にも色がついてきます。