ジャンルを超えた情熱
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1996年-2003年にリリースされた、現在ではすべて廃盤になっている楽曲をまとめて、アルバムというかたちで『復活』させたもの。
「ナージャ!!」が聴きたくてシングルを探したのですが見つからず、よく見たらこのアルバムに収録されているというので購入しました。
本田美奈子さんがアニメ関連の曲をこんなに歌っていたとは驚きでしたが、もっと驚いたのはアニメの曲とは思えないような良質のポップスがたくさんあるということ。
「ナージャ!!」はもちろんですが、「風のうた」「愛の砂漠」「星空」……どれもこれも素晴らしい曲ばかり。廃盤になったのが不思議なくらいです。
タイトルにもなっている「I LOVE YOU」は、尾崎豊のカバー曲。かなりさらっとした曲調にアレンジされているため違う歌のようですが……彼女の優しさが感じられます。
全体的に、歌に対する姿勢がすごく真面目です。どんなジャンルの歌でも変わらぬ情熱をもって歌い続けた本田美奈子さんの軌跡を、ぜひ堪能してください。
24年前を想い起こす
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私は24年前かな、デビューした頃の「アイドル:本田美奈子」が大好きでした。
確かトップには上り詰められなかったかと記憶していますがデビュー曲で「誘惑:テンプテーション」という大人びたタイトルを付けたアイドルも圧倒的な歌唱力を持っていたアイドルも他に(中森明菜さんくらいかな)居なかったから衝撃を受けて開設直後のファンクラブに入会した記憶があります。
当時のアイドルには歌唱力なんて必須条件に入っていなかっただけに衝撃は大きかった。
2〜3年して路線変更し自身も成人しアイドルを聴かなくなり気付くと彼女はオペラ歌手のような歌を歌う人になっていました。
その磨きを掛けた歌唱力に更なる驚きを覚えたと思ったら時を置かず「白血病になったけど必ず歌いに舞台に戻ってきます」とご自身で告白されるニュースを見て衝撃を受け自分の青春が掌から零れていく気がしました。
それからまた聴くようになり良い作品がたくさんあります。
確かにアヴェマリアは素晴らしい曲です。でもアルバムとしては本作が一番好きです。
昔好きだったご自身では多分好んで演じていなかったアイドル本田美奈子と死にゆく瞬間まで歌手であり続けた本田美奈子の両方を垣間見ることが出来る気がするからです。
自分の好きな(自己分析できている)自分も、自分の嫌いな(自己分析できていない)自分も全て自分です。それを受け入れて居られたような印象を抱く本作が決して永い生涯ではなかった本田美奈子という人物の全てを詰め込まれたような錯覚を抱きます。
本田美奈子、可憐さと安らぎ
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本田美奈子さんが38歳の若さで、急性骨髄性白血病で急逝されてから3年が過ぎようとしている。
彼女の生前には、私はあまり熱心なファンとは言えず、アイドル時代も歌のうまい子だなと想った程度で、ミュージカルやクラシック(クロスオーバー)に取り組んでいるという噂を聞いたときも、“歌うこと”に対する彼女の意欲と熱意に賛嘆しつつも、ついそのまま時間が過ぎてしまい、そして悲報に接することになってしまった。
最近やっと気持ちを整理して、彼女の遺してくれた作品に接し、そのあまりの美しさ、特に清純な高音の驚異的な伸びと歌唱のテクニックの確かさ、そればかりでなく、歌に込められた情感のこまやかさなどに、言葉を失うほどだった。ありきたりの言葉だが、もっと早く聴かなかったことがあまりに悔やまれる。
このアルバムは、本田美奈子さんが急逝された直後に、1996年から2033年にかけて、ちょうどミュージカルとクラシックのはざまの、さまざまな事情に巻き込まれて、アルバムの制作が困難だったという時期に、アニメやゲームソフトの主題歌などを手掛けていた曲をコレクションしたものという。当然、ポップスライクなナンバーが主体だが、この困難だった時期に、彼女の胸中にはさまざまな想いが去来していただろう時期にもかかわらず、ここで聴かれるのは、着実に歌唱力・表現力に磨きをかけて行った彼女の歌に対する前向き・誠実そしてひたむきな姿勢であり、そしてその歌からあふれ出る優しさと幸福感である。そこには、後ろ向きな気持ちや暗さはまったくうかがえない。本当に、歌そのものにすべてを掛けた彼女の生き方に、改めて敬意と賛嘆の気持ちを捧げたい。
すべての曲に彼女のさまざまな魅力があふれているが、私個人としては、“風のうた”、“ナージャ”、“Honey”、“I love you”などに本田美奈子さんの可憐さに心惹かれるものがある。特に“etoile-星-”の安らぎに満ちた幸感、“impressions”の透き通るようなスキャット・ヴォイスが絶品。ジャンルを問わず、また困難にもくじけず、これほどハイレベルのすばらしい歌をたくさん遺してくれたことに、彼女の歌手としての実力を改めて思い知ると同時に、いっぱいの「ありがとう」を言いたい。心を込めて。
なお、このアルバムの売上金の一部は、“LIVE FOR LIFE”を通じて、白血病患者と研究活動の支援のために寄付されるとのこと。これもまた本田美奈子さんの遺志に応える途と思う。
美奈子96-03
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アルバムを出せずに「企画モノ」で勝負していたこの時期。15周年を記念してリリースされたシングル「Honey」は発売日に購入。ヒット要素の高い楽曲とは言え、シングルの帯の表記が間違っていたり(上からシールで訂正)、披露する場所が無かったりで、イマイチ売る気あるの?という感じのスタンスなレコード会社とは違い、美奈子自体は歌手として成長していた。手探りしながら次のステップを探していた彼女。アイドル時代以上にシビアな時代の記録。
大人の良質なポップス
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ヒット曲が収録されていないので、売れ行きが低いのがもったいないです。
聴いてみれば素晴らしさを実感していただけると思います。
ベストというより1枚のポップスアルバムという感じの印象です。
アニメ、ゲームソングとシングルの寄せ集めなどと軽く見たら大間違いです。
美奈子さんの歌が好きだけどロックやアイドル時代に満足できなかった人に是非聞いていただきたい1枚です。