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Zの悲劇 (創元推理文庫)

価格: ¥713
カテゴリ: 文庫
ブランド: 東京創元社
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歴史的評価程面白くはない ★★☆☆☆
 クイーンの三つの「悲劇」ものは推理小説の評価史上有名だが、はっきり言って、今読むと、イマイチなのも多い。
 本作も、あまりおもしろくはない。「数学的」解決法も、コジツケめいているところもあるし。ドルリー・レーンの推理も、そう大したものとは思えない。
 背景となる「伝奇的な過去」も、なにか、コナン・ドイルの昔のホームズ長編のようで、古くさいよ。

 ただ、次作「最後の事件」を読む前提として、本書には目を通しておいた方がいいだろう。(それ以外に意味があるとも思えないが)

 
ふたりの主人公 ★★★★☆
 「レーン四部作」も後半。ふたりめの新たな主人公が登場します。ペーシェンス・サム。サム警視の可愛い娘です。冒頭ハムレット荘ではレーンも認める観察力と推理力を披露し、つかみも十分。今風に言えば萌えキャラ主人公の登場です。

 たちのわるい政治ゴロ、フォーセット上院議員の刺殺で事件は始まります。論理的推理からいえば容疑者は犯人ではありえないはずなのですが、やがて第二の殺人がおき、再び捕らえられた容疑者に死刑の判決が下されます。死刑執行までに真相を明らかにできるのか、真犯人を明らかにすることができるのか、死のせまる無実の者を救う事が出来るのでしょうか。

 追いつめられた立場の無実の容疑者を救い事件を明らかにする時間との戦いの要素、そしてそのスリリングさが本作の読みどころであり、読む者は目が離せません。特に死刑執行を直前にしてのレーンの推理の披露、消去法で犯人をたたみかけるように明らかにしていく場面は圧巻ものです。

 一見するとめでたしめでたしで終わる本作ですが、気になることが一つ。ある登場人物の死について、ほとんど書き流すように書かれていますが、これはレーンが殺したも同然なのではないでしょうか。レーンの推理の披露が間接的とはいえこの人物の死をもたらしたのではないのでしょうか。

 そう思った時、私の「レーン四部作」の評価は変わりました。推理のためなら人の死も辞さない男、ドルリー・レーン。

 次回は「レーン最後の事件 (創元推理文庫 104-4)」弩級の驚愕が読者を待っています。 
作者にありがちな「ご都合主義」全開の作品 ★★★☆☆
作者作品には『Xの悲劇』や『エジプト十字架』などのように推理の論理や結末にこじつけんがための「ご都合主義」が散見されるが、本書はその最たる作品で、本来無罪と判決されるべき被告人に、ただただ作者の都合に合わせるためだけの理由で有罪判決を下させている。

被告人アーロン・ドウは上院議員をペーパーナイフで殺害した容疑で起訴されるが、その証拠はアーロンが上院議員を強請っていた手紙とアーロンが当日刑務所から釈放されたこと、そして当夜のアリバイがないことの3点だけで、上院議員を刺し殺したという証拠がないばかりかアーロンが上院議員宅に当夜出入りしたという証拠すらない状況の中、アーロンは有罪として終身刑に処される。

これは、ラストで死刑台に送られたアーロンをレーンに救出させようと白熱の推理を展開させるためで、確かに緊張感の高いドラマに仕上がってはいる。
しかし、もしも作者のように自分の都合だけで被告人を有罪に処する人ばかりで裁判員が構成された暁には、無実の罪で有罪となる人が今までの何10倍にも膨れ上がることだろう。
名作に挟まれたのが本書の悲劇 ★★★★☆
本書は名作「Xの悲劇」「Yの悲劇」の翌1933年に発表された作品だが、前2作とシリーズ最終作の「レーン最後の事件」とに挟まって思いのほか評価が低い。

本書の評価が低い理由はいくつか考えられるが、1つは「Yの悲劇」から10年余りが経過してレーンがすっかり老け込んでしまい、かつて「X」「Y」ではあれほど放射されていたカリスマ性や威厳、魅力がすっかり失われてしまっていることにある。

2つ目は、1つ目に関連するもので、レーンは安楽椅子探偵のように事件の情報を聞くのが主で、外見的に主役として活躍するのは主にサムの娘、ペイシェンスであるということ。ただし、ペイシェンスの活躍がいけないという意味ではなく、レーンの活躍がほとんど見られないという点でのことだが。

3つ目は、これが最大の理由だが、レーンの推理に「X」「Y」ほどのキレがないということに尽きるだろう。本書ではほとんどの推理が可能性の範疇のもので確実性が薄く感じられる。

これらの欠点を補うのがペイシェンスのロマンスを交えた活躍と、最後の最後、死刑執行される直前のレーンの緊張感あふれる迫真の推理で、これらによって前2作にはほとんどなかったドラマ性が感じられた。
それに、本書は充分水準以上の推理作品で、それがあくまでも「X」「Y」ほどではないというだけのこと。比較対象が厳しすぎると思う。
女探偵ペーシェンスの冒険 ★★★★★
無実であるにも関わらず、死刑判決をうけた男を救うため、死刑執行
までに、事件を解決しなければならないという《タイムリミット》もの。

特に、まさに死刑が執行されんとする場面でのレーンの推理は、
クイーン全作品のなかでも白眉といってよく、圧巻の一言です。


《レーン四部作》の前二作では、犯人に直接結びつく手がかりに基づく
《演繹的推理》によって、事件が解明されますが、本作では、いわゆる
《消去法推理》が用いられています。

作中には、犯人を特定しうる決定的な手がかりは存在しません。

刑務所に厳格な日課があったというデータや、紙クリップの跡が二つある封筒、
死体の手首に残されていた血まみれの指の跡などの手がかりから、レーンは、
犯人の四つの条件を導き出し、犯人以外の容疑者を消去していくのです。


計27人の容疑者を次々と消去し、最後に残った一人を犯人として指摘するクライマックスの
カタルシスは無類ですが、その後に訪れる皮肉な幕切れは、このシリーズならではの苦味
を残します。