いえるのはただ、衝撃のみ。
★★★★★
唖然、そして、衝撃。
これは四部作に実にふさわしい
終わり方でした。
ただ、結末は賛否両論かな。
テイストとしては「Zの悲劇」に
さらに地味さがプラスされた感じです。
とにかく、地味といったらありゃしない。
だけれども、そこのところはご辛抱を。
それに見合うほどの結末が待っていますから。
もはやこの終わり方は
「完全体」でしょう。
他に言いようがありません。
多くは語りません。
読んで真相を知るのが
一番なのです。
この作品は。
終幕―ドルリー・レーン氏の解決―
★★★★★
すべてはドルリー・レーンという人物を語るためにあったのです。「X」ではその登場。「Y」では彼に「狂気」に立ち向かわせ、「Z」では彼に対してもう一人の、かつ真の探偵役となるペーシェンスが登場。そして本作において、ドルリー・レーンは読者に思いもよらぬ姿を現わし、これを最後に舞台から永久に去るのです。
今回の彼の役は「探偵」ではありません。「最後のあいさつを送る演劇界の長老」が彼の役なのです。
事件や謎についてくだくだと語るのは野暮でしょう。これは老俳優の最後の舞台。鑑賞する我々は彼らが演じる物語に耽溺し、巧みな演技と演出に誘い込まれ、そして驚くべき結末に喝采をもって彼の最後を送るべきです。
ドルリー・レーン。「探偵」を演じた狂気のごとき俳優。
『彼は潔く去り、彼の負目を償えりと聞く、
されば、神よ、彼とともにいませ!』
また会う日まで――― ドルリー・レーン
ラストの衝撃は全作品中の中でも最大級!
★★★★☆
レーン4部作の最後を飾る作品。しかし、内容については以下の点で不満がある。
1.レーンは記号の意味を偶然知っただけなのに、それをペーシェンスたちに教えなかったのは不自然。
2.ペーシェンスたちを襲った襲撃者がレーンを尾行していたのはとくに極めて不自然。
3.ペーシェンスは後の推理で、第2の訪問者は「エールズ博士」からカギを奪ったハムネットだと推理するが、それはあくまでも「エールズ博士」の供述によるもので、第1の訪問者がマックスウェルから合鍵を奪ったハムネット、第2の訪問者が「エールズ博士」ではあり得ないとの論証にはならない。
4.ペーシェンスは、真犯人を特定した「ある身体的特徴」について、真犯人がその身体的特徴を有する未知の第三者ではあり得ないとの論証を怠っている。
以上、推理や物語の進行には不満は残るものの、4部作を締めくくるに相応しいドラマチックな内容で、ラストには著者最高傑作の「Yの悲劇」などをも凌ぐ最大級の衝撃が待ち構えている。
超傑作だが、「アンフェア」という意見はないのか?
★★★★★
本書は『Xの悲劇』『Y〜』『Z〜』と本書からなる「ドルリー・レーン四部作」の最終作で、レーンが元シェイクスピア俳優であることから、シェイクスピア四大悲劇(『ハムレット』『マクベス』『リア王』『オセロー』)にちなんで四部作とされたものと思われる。
『X』『Y』はいずれも作者の最高傑作と名高い作品で、本書はこれら「四部作」を締めくくるにふさわしく、その論理性・ 驚愕度ともに実に見事で、またもっともドラマチックな作品でもある。
ただし、本書だけを読んでも驚愕度やドラマ性には欠ける。本書はあくまでも「四部作」を1冊の本とした場合の最終章にあたるので、「四部作」すべてを順番に読むべきである。(『Z』はやや落ちるが、本書のカギを握るペイシェンスが初登場するので、辛抱(ペイシェンス)して読んだほうがいいだろう)
なお、本書について「アンフェア」という意見が聞かれないのは少し不思議である。
クリスティーの『アクロイド殺し』をアンフェアと主張する人が未だにいるが、多くはその理由を「読者から見て当然信頼すべき人物を真犯人とする設定にしたことが、読者に対する裏切り行為、すなわちアンフェアである」というものである。
しかし、その主張はそのまま本書にもあてはまる。
もしも『アクロイド』をアンフェアと主張するならば、上記に該当する本書や、『アクロイド』とまったく同じプロットの他の著者の作品も同様にアンフェアと主張すべきである。
なお、私自身は本書も『アクロイド』もアンフェアとは少しも思わない。登場人物すべてを疑うのは、推理小説読者の義務と考えるからである。
これを書くために・・・・・
★★★★★
X,Y,Zと続いてきて、そして、最後の最後に大どんでん返し。他の文庫では、「最後の悲劇」とも呼ばれているドルリー・レーンもの悲劇4部作の最終章。「Yの悲劇」が、エラリー・クイーンの最高傑作とも言われているが、私は、X、Y、Zすべてこの最終章を導くための伏線であったと考える。最後の1〜2ページにドルリー・レーンの思いがすべてこもっている、ペイシェンス・サムの思いがすべてこもっている、そして読者を引きつけてやまないミステリー作家エラリー・クイーンに対する絶賛の拍手を送るのだ。