予定外の作品ではあるが
★★★★★
モノリスの発見に端を発する「宇宙の旅」シリーズの中では、必ずしも本書を世に送る必然性はなかったわけですが、85〜86年にハレー彗星の接近に遭遇して、クラークの作家魂が大きく揺り動かされたのでしょう。予定外とはいっても、もちろん科学とフィクションが黄金比的に組み合わされた、クラーク・ワールドが楽しめることは間違いありません。
シリーズとの絡みでいえば、モノリスの存在意義がより明瞭になり、木星の「恒星化」もその一端であったことがわかります。最後の方で、ボーマン元船長、フロイド博士、そしてハルの3「人」が次作での主要キャラクターとなることが示唆されます。
一挙に読み切る時間がなく、間が1週間も空いてしまった者としては、この作品でも主な登場人物を冒頭に示してほしかったと思います。できれば、ディズカバリー号の人々、ユニバース号の人々、などと分けて…
訳が微妙
★☆☆☆☆
さっと読めない。意訳じゃなく直訳っぽい感じでした。
人それぞれなんでしょうけど。
2001年、2010年、3001年は気持ちよく読めました。
ハレー彗星とエウロパの表面はどうなっているかの仮説
★★★★☆
宇宙の旅シリーズの第3弾です。本来ならシリーズ第3弾は『20,001年宇宙の旅』というタイトルの完結編になる予定でした。ところが、執筆準備をしていた1986年にハレー彗星の地球への接近というイベントがあった為に、クラークはハレー彗星についての作品を書きたいと思い立ち、完結編の前にこの作品が登場したとのことです。2061年というのはハレー彗星が次に地球に接近する年です。この為、クラークの興味はハレー彗星の表面がどのようになっているかの仮説を展開することに向いており、シリーズ本来の本筋からはちょっと外れている感じもします。
それでも、中盤からは木星の衛星エウロパを探査していた宇宙船が難破してしまい、ハレー彗星の探査をしていた別の宇宙船が急遽救出に向かうことになるというやや強引なストーリー展開によって、前作で謎とされたエウロパへと舞台が移ります。しかし、完璧に謎解きはされず、第4弾『3001年終局への旅』へと興味をつなぐエンディングとなっています。
生き生きとした奇跡
★★★★☆
もしあなたが、生命や宇宙の神秘に興味があるなら、必ず読むべき作品であると私は思う。
クラークは、確かに最新の研究の成果を作品に取り入れることのできる、ハードSF作家だ。
だが、クラークの魅力は、その科学の成果に生き生きとした命を与えることにある。
例の海の場面で、あなたは、この本を読んでよかったと、心から思う、そう私は信じる。