ページ数に驚き
★★★★☆
まずこの作品だけは
やけに本が分厚いです。
これはクリスティの作品としては
非常に珍しいことではないでしょうか。
確か400ページ越える作品は
まれだったような気がします。
だけれどもページ数が多い割には
あまり退屈する作品ではなかったです。
それは犯人と目される人物が
ころころ変わっていくような構成になっていて
犯人が誰かはつかみづらいから。
でもヒントが実はさりげなく出ていますし、
わかる人には犯人はわかることでしょう。
今回なぜ☆5つじゃないかというと
若干女性特有の嫉妬とかが
出てきていて苦手な人には堪えるため。
なので苦手な人は気を付けましょう。
ページ数の多さは気になりませんでした。
ナイル川を見たことがないので
★★★★★
ナイル河を見たことがないので、ピンとは来ていません。
映像作品で、風景や、発掘現場などの様子から、なんとなく思い浮かべようとしながら読みました。
アガサクリスティの描写の細かいところには感服します。
実際に暮らしているからこそ分かる内容なのでしょう。
イギリスに暮らしていると、中東での生活の良さが伝わってきます。
登場人物をたどりながら、読み進めました。
犯人探しは半分までは考えても当たらないので、最後の2割くらいになってから感じるようになりました。
半分くらいまで来たときに、ポアロと自分の違和感の原因が分かりました。
犯人の思いが分かりました。ただし、2人目以降の殺人がどうなるかは、伏線が強くない人はあたりませんでした。
作者作品ではベスト・トリック
★★★★☆
ナイル河遊覧の船旅の中で新婚旅行中のリネットが射殺される。さらに第二・第三の殺人が起きるが...。
本書は傑作揃いのポアロ中近東シリーズの中でも、映画化されたこともあっておそらくもっとも人気のある作品だろう。いや、人気があるから映画化されたのかも知れないが。
実際、本書で用いられたトリックは、おそらく作者作品中、随一のものだと思う。これで犯人が分かるという人はまずいないのではないか。
しかし、第一の殺人は犯人に都合が良すぎる。
もしも証人に予定されていた人物が犯人の思うとおりに行動しなかったらどうしていたのか? また、別の誰かが問題の場面にひょっこり顔を出したらどうしていたのか?
犯人にとってあまりにもリスクの高い計画であり、このようなことを実際に行うとは考えにくい。
トリックの完成度に比べ評価が星4つと低いのはそのため。
なお、マープルもので、本書のトリックをアレンジした作品がある。
おそらく、上記の欠点を改良したつもりだろうが、残念ながら作品の質はずっと落ちている。
クリスティーの最高傑作
★★★★★
最初僕がこの本を買ったときは、とても分厚いし、登場人物も多くて読みづらそうだなーと思いました。でも、全員がすぐ覚えられたし、ドキドキさせる展開で、夜寝る前に殺人事件が起こる前から読み始めて、なんとその夜のうちに最後まで読んでしまいました。最初は全然犯人が分からず、ポアロが犯人を当てたときには、「最初の事件の犯人が、あんな確実なアリバイのあったはずの××だったとは!」と驚きました。しかも、初めのリネットとサイモンが結婚した時から計画が進行していたとわかったときには、本当に驚いてこんなトリックを考え付いたクリスティーはすごいと感心するばかりでした。間違いなくクリスティーの最高傑作のひとつだと思うので、みなさんも是非読んでみてください。
男を愛している女と、女に愛させている男
★★★★☆
オリジナルは1937年リリース。クリスティーの長編で最も長く、著者の前書き付き、訳者からのおねがい付き、クリスティーの孫にあたるマシュー・プリチャード(クリスティー財団の理事長)の添え書きありと、おそろしく力が入った導入部である。ストーリーの構成がいつも以上に大掛かりで、戯曲仕立てがより濃厚な作品に仕上がっている。クリスティーが13歳年下の考古学者マックス・マローワンと再婚したのが1930年40歳の時で、それ以後毎年のようにイラクやシリアに出かけていて、そういった蓄積が一挙にカタチに仕上がったのが本作と言えるだろう。
しかし読んでみると、豪華客船やエジプト文明の占める要素は3%くらいで、むしろ感じるのは女性心理の機微を的確に捉えたフレーズのすばらしさだ。特に前半部分の心理描写のすばらしさはミステリーであることを忘れそうにすらなる。まさに『春にして君を離れ』のメアリ・ウェストマコットの文体である。
クリスティーの作品で最も魅力ある部分は、女性心理描写ではないかとぼくは思う。ポワロの灰色の脳細胞より、むしろそこに惹かれる。劇のような作品だ。