ジャズとパリの共演が奏でる恋物語
★★★★☆
恋とジャズを信奉したフランス人ボリス・ヴィアンが、パリを舞台に描いた恋愛小説です。
1947年に出版された本ですが、今読んでもそのポップで透明な文体と独創的な想像力の描く世界観は、
読み手を引きこんで止みません。
主人公コランとクロエが出会い恋に落ちる物語の前半は、少年少女の奇想天外で可愛らしい空想や、
カクテルピアノのような遊び心のあるアイテムが次々とジャズの調べのようにテンポ良く繰り出され、
世界の全てが無条件に二人を祝福している幸福なファンタジーのように展開していきます。
ですがクロエがこの小説の代名詞ともいえる心臓に睡蓮が生える病によって物語が一転すると、
そこから恋愛小説史上で最もせつなく、そしてあまりにフランス的とも言える残酷な結末につながっていきます。
若い日の恋愛の光と影のコントラストを、これほど透明に、やさしく、それでいて突き刺さるように描き切った作品を
私は他に知りません。若い人に是非薦めたい一冊です。
岡崎京子さんで知りましたが
★★★★☆
凄く綺麗な物語です。
初めは楽しく
そして徐々に破滅に向かう様が
なんとも言いようがなく絶望的です。
ですが最後までユーモラスで
表現が面白く最後まで飽きる事がなく読みました。
愛ゆえに
★★★★☆
最後のページをめくるまでコランとクロエのしあわせを願い続けた。
もちろんシックとアリーズ、ニコラとイジスのしあわせも合わせてだ。
おっと!ハツカネズミくんも忘れちゃいけない。まぁ、忘れるわけもないけれど・・・
読み終えると沸々と怒りがこみあげ、作者であるボリス・ヴィアンに憎しみすら覚えた。
「愛ゆえに」
それに気付いたのは読み終えてから2日目のことだった。
まともでない世界での、まとも?な恋愛
★★★★☆
読む人を選ぶ作品だと思う。
「ライターに太陽の光を数適たらしこむ」。
こんな表現にピンと来れば読むのをおすすめするし、意味不明と思うなら読まない方がいいかもしれない。
世界はことごとくいかれていて、残酷な童話のようだ。
すぐ人は死ぬし、死に方もいちいち異常。
むしろ主人公6人だけが普通というか、世界にそぐわない純粋さを持っている。
それが「若者」であり、「青春」ということだろうか。
掛詞や造語などの言葉遊びがこの作品の魅力のひとつでもあるのだが、原書で読めない日本人にとっては、どうしても分からないニュアンスがある。
「我輩は猫である」が「I am a cat」になると、妙に脱力してしまうのと一緒で。
本当はもっとおもしろいんだろうなあと思うと、残念でならない。
それでも、奇想天外な世界観は十分に楽しめる。
特に、主人公コランの作った「カクテル・ピアノ」は秀逸。
本気でほしいと思ってしまった。
恋愛と表現と世界観を楽しめる人は、ぜひご一読を。
やっぱり伊東守男さんの訳でないと。
★★★★★
「日々の泡」の題名で他社からも出ているけれど、「訳文のリズム感と小説自身の世界観との調和」という観点から読んでみると、こちらの方が上だなぁと、思いました。巻頭の献辞「僕の愛する可愛い子ちゃんへ」。こういったセンスに溢れた訳文にピンと来ない御仁は××(特に秘す)だよ!